2024年12月22日(日)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2017年7月31日

 ウォール・ストリート・ジャーナル紙が「香港の心配な20周年記念日:引渡し後20年、中国はその約束を裏切った」との社説を6月30日付けで掲載し、中国の香港への対応を批判しています。社説の要旨は、次の通りです。

(iStock.com/9comeback/Koryaba/nubumbim)

 習近平は香港の中国返還20周年記念日のために香港を訪問、赤じゅうたんの歓迎を受けたが、香港には、北京が民主主義と自治の約束を尊重していないとの怒りがある。若者は過激化し、香港統治を難しくしている。

 表面的には、50年前鄧小平が作った「一国二制度」は機能している。香港の資本主義システムは巨大な富を生み出し、司法は公式には独立、市民的自由は保護されている。

 しかし、よく見ると、香港は特別な地位から滑り落ちている。中央政府の「連絡官」が香港を細部にわたり管理しており、全人代が重要な司法判断を翻し、司法の独立が脅かされている。

 特に若者は、中国が香港を変えていることに怒っている。2014年の「雨傘運動」で学生たちは75日間、ビジネスの中心街を占拠し、行政長官の直接選挙を求めた。中国政府は中国政府寄りのビジネスマンが多くいる1200人の委員会での行政長官選出を続けている。

 香港の抗議は強弱があるが、北京は妥協よりも脅しで対応し、怨恨を深めてしまった。若い政治家が中国からの独立を言うなど、中央政府が恐れていた反対派が作り出されている。

 香港の自由を支える重要な点は文章化されていない。1980年代の中国には、経済を自由化し、さらに政治改革も始め、民主化するとの前提があった。一部は、香港が北京に本当の選挙を受け入れさせるのではないかとさえ期待した。しかし、胡錦濤も習近平も中国で政治的抑圧を強めた。香港は民主的モデルではなく、分離主義者への抑圧を示す場所になった。新しい行政長官Carrie Lam(林鄭月娥)は、破壊活動防止法を再提案することを強制されかねない。中国外務省は香港に関する中英共同宣言は「現実的意味のない歴史的文書」と述べた。

 これは香港にとって悲劇である。同時に繫栄が自治につながると希望した中国人にとってもそうである。中国政府による反対論の抑圧は民主主義が彼らの自由を保障するために必要であると香港の新しい世代が固執することにつながるだろう。中国の統治の30年目はもっと荒れたものになるように見える。

出典:‘Hong Kong’s Anxious Anniversary’(Wall Street Journal, June 30, 2017)
https://www.wsj.com/articles/hong-kongs-anxious-anniversary-1498779564


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