アマゾンのAlexaに対応するアプリはスキルと呼ばれ、その数は9月の時点で2万を超えています。Google Homeのアプリ(アクション)の数は、まだ500に満たない段階です。パソコンやスマートフォンでAmazon.comのアレクサ・スキルズのページを開いて、新しいスキルを選べば、Echoで利用できるようになります。例えば「アレクサ、イタリアンシェフに海鮮パスタの作り方を聞いて」と話しかけます。Alexaは「イタリアンシェフ」という名前のスキルに「海鮮パスタの作り方」という情報を送り、返ってきた答えをユーザーに音声で伝えます。
いくつかの調査によると、一人のユーザーのスマートフォンにインストールされているアプリの数は平均すると30個程度で、実際に使用するのはその1/3、さらに頻繁に使うアプリはほんの数個だそうです。そして、インストールされたアプリが翌日まで生き残る(消されない)確率は25%、90日後ではたったの5%という、アプリを開発するサードパーティにとっては非常に厳しい死屍累々の状況になっています。このサバイバルは、スマートスピーカーのアプリではさらに厳しくなるはずです。こちらのアプリは、ユーザーに自分の名前を覚えておいてもらわなければなりません。
スマートフォンのアプリの収益化には、有料アプリ、アプリ内広告、そしてゲームやSNSなどでコンテンツを販売するアプリ内課金などのモデルがありますが、スマートスピーカーのアプリの収益モデルは見えていません。Alexaの2万のスキルはすべて無料で、アプリ内課金もまだ許されていません。人気のスキルの開発者にはアマゾンが報酬を出すようですが、それではエコシステムは形成されません。
二つの興味深い特徴
しかし、音声アシスタントというプラットホームには、会話というユーザーインタフェースならではの体験を提供する、そして収益性をも兼ね備えた、まったく新しいアプリが生まれる可能性があるように思います。そして、Google Assistantには、それを予感させる二つの興味深い特徴があります。
Alexaには「アレクサ、イタリアンシェフに海鮮パスタの作り方を聞いて」と話しかけましたが、Google Assistantには「オッケーグーグル、イタリアンシェフを呼び出して」と話しかけます。「オッケーグーグル、シェフの落合さんを呼び出して」の方が、例としてわかりやすいかもしれません。
すると「シェフの落合を呼び出しました」というGoogle Assistantの返事に続いて、シェフの落合さんが「はい、シェフの落合です」と別の声で登場します。そして、ユーザーはGoogle Assistantを介さずに、直接シェフの落合さんと会話して、海鮮パスタの作り方を教わることができます。もちろん「シェフの落合」はアプリの名前です。米国では、男女それぞれ二種類の声がアプリに用意されています。
音声アシスタントとアプリの関係に注目すると、Alexaはユーザーの質問や指図に応える、キャラクターを持った存在であり、そのアプリであるスキルは、その名が示すように、Alexaが備えることができる技術や能力という位置づけになっています。それに対しGoogle Assistantは、アプリを呼び出すだけの役割です。Google Assistantのアプリの開発者は、そのアプリが提供するサービスに即した、より良質な体験をデザインして提供することができると思います。
グーグルから提供される開発キット(SDK)を利用して開発されたGoogle Assistantのアプリは、Google Homeからだけでなく、スマートフォンからも利用できます。また、アプリの開発の最終段階で、FacebookのMessengerやLINEなどのチャットアプリの中でユーザーとテキストで会話する、チャットボットとして仕上げることができます。その仕組みのイメージを図にしてみました。緑の部分がグーグルが提供しているものです。
例えば、買い物に出かけたスーパーで、「シェフの落合」さんというチャットボットに「さっきのレシピの材料を教えて」と、LINEで質問するといったことができるようになるかもしれません。
Google Assistantのアプリは、直接ユーザーと会話することができる。そして、デバイスに跨ってシームレスなユーザー体験を提供できる。この二つの特徴に注目して、既存のビジネスを拡大するアプリ、あるいは新しいビジネスを創出するアプリを考えることができるのではないでしょうか。
Google Homeは、米国で129.00ドルで販売されています。対するアマゾンは、9月27日に新しいEchoを発表し、99.99ドルで予約販売を開始しました。これまでのEchoはEcho Plusに名前が変わり、179.99ドルから149.00ドルに値下げされて、さらにフィリップス製のスマート電球がおまけについて販売が継続されます。それが、Google Homeの日本での販売価格に影響を与えることを期待して、楽しみに待ちたいと思います。
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