2024年7月16日(火)

東大教授 浜野保樹のメディア対談録

2010年10月12日

ボブ・ディランとも違った

石坂 『ビルボード』の集計によると、シングル盤売り上げの1位はエルビス・プレスリー、2位が、ザ・ビートルズなんですよ。ビートルズの活躍期間は割と短いんです。エルビスよりも。

石坂敬一氏

 8年間ですから。にもかかわらずあれだけの事跡を残したのは、主体的な発信者だったからだと思います、ビートルズの場合。それに対してプレスリーは、演出家がいて、彼をああいうふうにしたって面が大きい。

 例えばジョン・レノンが、キリスト冒瀆にちかいことを言って大問題になったのが1965年です。これなんか、演出上の設計にない動きであり、発言ですね。

 それから2人のスーパースターを生んだ。ジョン・レノンと、ポール・マッカートニー。あの頃、4人組で、フロントメン2人が2人ともスーパースターっていうのは初めてでした。

 しかもそのうちの1人は、天性の「芸人」ですね、ポール・マッカートニーのことです。もう1人は、天性の「詩人」。

 だいたい「詩人」なんてそれまで居なかったですよ。

 ボブ・ディランが「詩人」だって世の中じゃ言う。そういう面があるけれど、「フォーク・シンガーとしてメッセージを持っていた人」と言った方がいい。ジョン・レノンと似ているところは、ヒットソングがほとんどないのに偉大(笑)なところくらいかな。

浜野 石坂さんは自分のことを「企業人」だと仰っていて、そして、トップに上り詰めないと意味がないんだとも言われている。

 そこも後程伺いますが、あの当時、ジョン・レノンたちとお付き合いになってて、彼らの主張に共感なさっていたんですか。世界は変えられるんだ、変えなきゃならないんだ、っていう。なんでも石坂さんは、身なりからして企業人らしくなく、とんがっておられたようですが。

レノンこそは、わがグル

石坂 レノンのことは、トータルでリスペクトしてました。たまたま自分はいまレコード会社に居るけれど、もしそうでなかったとしても、レノンは自分のguruである、と。

 つまり「導師」である、と。彼の発言、表現を、解説し、敷衍(ふえん)して、世の中に広めるのが仕事だと、一時期そう思っていたことがありました。


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