ボブ・ディランとも違った
石坂 『ビルボード』の集計によると、シングル盤売り上げの1位はエルビス・プレスリー、2位が、ザ・ビートルズなんですよ。ビートルズの活躍期間は割と短いんです。エルビスよりも。
8年間ですから。にもかかわらずあれだけの事跡を残したのは、主体的な発信者だったからだと思います、ビートルズの場合。それに対してプレスリーは、演出家がいて、彼をああいうふうにしたって面が大きい。
例えばジョン・レノンが、キリスト冒瀆にちかいことを言って大問題になったのが1965年です。これなんか、演出上の設計にない動きであり、発言ですね。
それから2人のスーパースターを生んだ。ジョン・レノンと、ポール・マッカートニー。あの頃、4人組で、フロントメン2人が2人ともスーパースターっていうのは初めてでした。
しかもそのうちの1人は、天性の「芸人」ですね、ポール・マッカートニーのことです。もう1人は、天性の「詩人」。
だいたい「詩人」なんてそれまで居なかったですよ。
ボブ・ディランが「詩人」だって世の中じゃ言う。そういう面があるけれど、「フォーク・シンガーとしてメッセージを持っていた人」と言った方がいい。ジョン・レノンと似ているところは、ヒットソングがほとんどないのに偉大(笑)なところくらいかな。
浜野 石坂さんは自分のことを「企業人」だと仰っていて、そして、トップに上り詰めないと意味がないんだとも言われている。
そこも後程伺いますが、あの当時、ジョン・レノンたちとお付き合いになってて、彼らの主張に共感なさっていたんですか。世界は変えられるんだ、変えなきゃならないんだ、っていう。なんでも石坂さんは、身なりからして企業人らしくなく、とんがっておられたようですが。
レノンこそは、わがグル
石坂 レノンのことは、トータルでリスペクトしてました。たまたま自分はいまレコード会社に居るけれど、もしそうでなかったとしても、レノンは自分のguruである、と。
つまり「導師」である、と。彼の発言、表現を、解説し、敷衍(ふえん)して、世の中に広めるのが仕事だと、一時期そう思っていたことがありました。