世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2017年10月23日

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 定期的に選挙が行われても、固定した支配層が深刻な貧困と不平等の上に君臨する事情は、フィリピンでもタイでも同じです。時として、支配層に対する怒りに火をつけて政権を奪取するポピュリストが現れても、この事情は変わりません。ドゥテルテもタクシンもこのポピュリストの手段を弄して政権を得ました。タクシン一派は苦しい状況にありますが、彼等の影響力は終わりではないかも知れません。ドゥテルテも逆襲されればやり返す準備は怠っていません。つまり、伝統的支配層に挑むのは「まともな民主主義ではなく、ポピュリズムだ」という事情はいずこも同じです。判りづらいですが、以上がこの記事の論旨のようです。

 そういう意味でドゥテルテとタクシンの類似性をいうのは一応納得出来ます。しかし、両名とも共産主義者との係りがある、両名ともイスラム勢力に強硬な姿勢を維持している、両名とも麻薬撲滅のために超法規的手段を用いることに躊躇しない、といった指摘は、事の性質や背景を無視した議論で、類似性をいうことにあまり意味はありません。

 恐らく、タクシンがドゥテルテと違うことは、タクシンはエリートであることです。タイの政治劇は、タクシン一派という新興勢力が伝統的支配層に挑んだ権力闘争であり、その過程で、農民の債務の支払い猶予、農村に対する低利融資、安価な医療制度などのポピュリスト的政策で地方の農民層や低所得者層を支持基盤に取り込みました。上記記事は、彼が「人民の側について王室に取って代わろうとした」と書いていますが、むしろ王室の一部を取り込もうとしたのだと思います。このような動きに危機感を覚えた伝統的支配層が反撃に出てクーデターで彼を追放するに至ったということです。

  
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