イノベーションの風を読む

2017年10月26日

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 日本のメーカーでプロダクトマネージャーが機能していない理由を、もう一つ挙げることができます。それは、プロダクトマネージャーに要求されるスキルが大きく変化したことです。これまで、メーカーのプロダクトマネージャーは、製品(ハードウェア)の機能的な価値だけを考え、製品そのもののデザインと、製品を使うときのユーザーの体験、すなわちユーザビリティ(使い勝手)のデザインを、デザイナーと共に検討すれば良かった。

 しかし、デジタル化された製品は、携帯音楽プレーヤーやカメラ、そしてテレビや生活家電、自動車までもが、直接的あるいは間接的にスマートフォンのアプリやインターネット上のサービスと繋がるようになりました。プロダクトマネージャーは、アプリやサービスとの連携によって可能になることや、その実現方法、それらを自社で開発して提供するのか、他社のサービスを利用するのかといったことについても見極める能力が必要になります。

 デザインについても、インダストリアルデザインと、アプリや(インターネット上の)サービスのデザインはまったく異質なものです。さらに、製品を使うときだけでなく、連携するアプリやサービスを利用するところまでの、より広範囲のユーザーの体験をデザインしなければなりません。これも機能領域でのプロダクトマネージャーの重要な仕事になりますが、協働するデザイナーにも、UX(ユーザー体験)デザインの高いスキルが求められます。

プロダクトマネージャーに必要なソフトウェアに対する深い理解

 すでに、アプリやサービスというソフトウェアは、ハードウェアの添え物ではなくなっています。むしろ、ソフトウェアを起点にしてハードウェアを見直してみるべきでしょう。音楽はCDで販売されるのではなく、インターネットのサービスから配信されるようになりました。写真は、ソーシャルメディアで共有されています。音楽を楽しむプレーヤーや、写真を撮るカメラは、そういったユーザーの体験の中でどうあるべきかを、顧客領域から考え直して再定義する必要があります。プロダクトマネージャーには、ソフトウェアに対する深い理解が欠かせなくなりました。

 プロダクトマネージャーには、アイデアの実現性を判断するためにも、新しい技術を理解したり、それをどのように応用すれば良いかを考えることができるスキルが必須です。そのため、プロダクトマネージャーは、エンジニア出身であることが多いと思います。しかし、日本のメーカーでプロダクトマネージャーが、ソフトウェアエンジニア出身、プログラマー上がりであることは非常に稀なことではないでしょうか。

 ウォークマンやiPodのような、それまでになかった画期的な製品が生まれた経緯は様々ですが、そこには明確なニーズがありました。そのニーズを満たす製品のアイデアの市場性と実現可能性を評価し、開発すべき製品を明確に定義し、その提供価値の実現に責任を負うのがプロダクトマネージャーです。思いつきのアイデアをそのまま製品化してしまったような、ニーズが明確でない残念な製品が生まれるのは、顧客領域と機能領域でのプロダクトマネージャーの仕事が不十分、あるいは、その責任が分散されて不明瞭になっているからなのかもしれません。

  
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