世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2017年11月24日

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 習近平は、事前に党中央の「核心」となり、人民解放軍の大改革を成し遂げ、「最高統帥」となりました。党大会で「習近平の新時代の中国の特色ある社会主義思想」を党規約に書き込むことに成功し、政治局も政治局常務委員会も自分の息のかかった人物で多数をとりました。しかも次期指導者候補も決めませんでした。そしてマスコミを使って「個人崇拝」を煽っています。習近平の権力は、確実に強化されました。

 しかし、そこには多くの脆弱性があります。イグネイシャスが挙げている理由は、その一部に過ぎません。

 最大の脆弱性は、8900万人の党員全体のやる気の問題にあります。党員に高邁な理想と高い倫理観を強く要求しています。末端までさらに反腐敗闘争を強化すると言っています。上への絶対服従を要求し、しかも自発的に自分で考えどんどんやれと要求します。これに応えることのできる党員、とりわけ基層幹部の数は多くはないでしょう。習近平が打ち出した多くの目標も、成否は末端での実質的な成果にかかっており、実施には多くの課題があります。

 権力の集中を背景に、個人への権威を高めて党と国民を引っ張っていこうとしています。習近平は文革世代です。世界も直接体験としては知りません。どうしてもこういうやり方しか思いつかないのでしょう。しかし党員も国民もポスト・モダンに入りつつあります。彼の手法は、いずれ壁にぶつかるのではないでしょうか。とりわけ経済政策に「政治」を持ち込めば、効率は落ちます。「中国の特色」で結果はだせるということかもしれませんが、経済の現場がいずれその結果を出すことでしょう。

 習近平は党員を含む国民に「夢」を与え、その夢に邁進することで求心力を強めようとしています。政策が効果を上げず、実績が思うように上がらないと、これは習近平の責任となり、習近平の求心力は落ちます。党の実力者たちが、反腐敗による権力闘争が成功したというだけで、これだけ習近平に権力が集中するのを座視するはずはありません。習近平への権力集中は、その側近以外のすべての実力者にとって良いことはないのです。習近平が主張するように、目標を定め、党をきれいにし、「前衛」として中国を引っ張って行けるようにしないと、共産党自体の命運も尽きるという内々の共通認識があるので、党の実力者たちは今回かなりの程度、習近平のやりたいようにやらせたと考えるべきでしょう。それだけ言うのであれば、やらせてみようということになった可能性は高いです。

 しかし習近平第二期において成果が出なければ、習近平に三期やらせる必要はありません。求心力が落ちれば、習近平の続投の可能性は、そこで消えます。鍵は、やはり国民の反応にあります。

  
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