2024年12月23日(月)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2017年11月24日

 ワシントンポスト紙コラムニストのイグネイシャスが、10月26日付の同紙で、習近平への権力集中が大方の予想を上回って進んだことが、逆に習近平体制を脆弱にすると論じています。論旨は以下の通りです。

(iStock.com/Ryo_stockPhoto/paylessimages/daboost)

 習近平は、今回の党大会で華々しく自らの支配を見せつけたが、一部の観察者は、習近平が実は背伸びしているのではないかと考えている。習近平は、第19回党大会という舞台を完全に支配していたし、彼の権力は集団指導体制を崩し、毛沢東や鄧小平のような存在になろうとしている。「習近平思想」は、今や「新時代」の指導原理となったのだ。

 パミール・コンサルティング会社のレポートによると、習近平政権の最初の五年における反腐敗キャンペーンで、153万の党員が調査を受け、27万8千人が起訴された。その中には、440人の部、省レベルの幹部、そして43人の中央委員が含まれている。軍も、1万3千人の幹部がクビにされ、50人を超える将校が汚職によって投獄された。習近平は、その結果、空席となったポストを埋めている。習近平によって補充された幹部は今や中央委員会の20%を占める。

 習近平は派閥闘争でも優位に立っている。パミールによると、25人の政治局委員のうち、17人が彼の仲間である。政治局常務委員会では、7人のうち、4人が習近平派に属する。そして、ここ数十年で初めて、後継者となる人物が常務委員会に入らなかった。このことは、習近平が2期10年の定年制を無視しようとしていることを示す。

 このような急速な権力の強化によって、何が起きるのか。一部の分析者は、習近平の支配が完全となった結果、それが脆弱性になると論じる。習近平は経済と外交を完全に司るため、いかなる挫折も彼個人が責められることになる。

 習近平は、自らに対する反対を懸念しており、最近、ある党内文書が、党の指導、共産党の歴史、中国の伝統文化と国家の英雄に対する批判を禁止したという。それはつまり、習近平に対する批判を禁止するのと同義である。

 習近平の野望は国内あるいは個人の権力に限らない。彼は党大会で中国が2050年までに技術、金融、安全保障において支配的な「近代化強国」になることを目標としてあげた。5年前、中国が目指していたのは地域強国であった。それが今や習近平は中国が新たなグローバル秩序を作ると言っている。

 トランプの米国は難しい問題に直面している。習近平は今やトランプの好意に報いるつもりだし、トランプ訪中を盛り上げ、盛大な歓迎儀式の後には、双方の家族を含めた写真写りの良い会合を開く予定である。トランプ=習会談の「達成事項」はおそらく北朝鮮問題と貿易となるだろう。習近平は楊潔篪元駐米大使を外交担当副総理にするようだ。

 中国の戦略家は伝統的に、実際の勢力よりも自らを弱く見せることで敵を驚かせるのが賢明であると論じてきた。このやり方は今や君主のように君臨する習近平には不可能である。彼は、表面の派手な強さの内側にある脆弱性を自覚しなければならない。

出典:David Ignatius ‘Xi Jinping is more vulnerable than you think’ (Washington Post, October 26, 2017)
https://www.washingtonpost.com/opinions/global-opinions/xi-jinping-is-more-vulnerable-than-you-think/2017/10/26/8cf1a666-ba8f-11e7-be94-fabb0f1e9ffb_story.html?utm_term=.82b43cb6aa57


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