First, and most importantly, there was the unprecedented intervention by then FBI Director Jim Comey. His October 28 letter about the investigation into my emails led to a week of wall-to-wall negative coverage. A look at five of the nation’s top newspapers found that together they published 100 stories mentioning the email controversy in the days after Comey’s letter, nearly half of them on the front page. In six out of seven mornings from October 29 to November 4, it was the lead story in the nation’s news cycle. Trump understood that Comey’s apparent imprimatur gave his “Crooked Hillary” attacks new credibility, and Republicans dumped at least $17 million in Comey-related ads into the battleground states. It worked.
「第一に、そして最も重要なのは、当時のFBI長官のジム・コーミーによる前代未聞の横槍が入った。わたしの電子メールが捜査対象になっているとの10月28日のコーミー長官の書簡のせいで、その後の1週間はわたしについてネガティブな報道ばかりとなった。アメリカの主要な新聞トップ5紙でみると、コーミー書簡が出た後の数日間に、メール問題について計100の記事が掲載され、そのうちほぼ半数は1面に出た。10月29日から11月4日の毎朝のニュースでは、7日間のうち6日は電子メールの件が全米トップニュースだった。コーミーによる歴然としたお墨付きを得て”いかさまヒラリー”という攻撃が一段と真実味を持つことをトランプは理解していたし、共和党は1700万ドルの資金をコーミーを絡めた広告に投じて激戦州で放映した。それがうまくいった」
ヒラリーが国務長官時代に私用メールを使っていた問題だ。国家機密が漏れたのではないかなど大統領選の序盤で騒がれ、いったんFBIは問題なしとして16年夏に捜査を打ち切っていた。それを、投票日の11月8日が迫るなかで、わざわざコーミー長官は議会に対し新たな調査をしていると書簡を送り、メディアにもリークされた一件だ。その後、コーミー長官は11月6日に、新たな調査の結果でも問題なしと議会に伝えている。ヒラリーからすると、この選挙戦の最終盤で電子メール問題を蒸し返されたのは大打撃だった。FBI長官が選挙戦に影響を与えたと批判している。
主要メディアへの苦言も
ヒラリーは本書の別の章では、歴代の国務長官や他の政府高官も私用メールをつかっていたとも弁明している。そもそも私用メールでは機密事項には触れていなかったと話す。自分の落ち度は認めながらも、自分だけが責められることに不満を隠さない。反対陣営が意図的にリークする情報を頼りに、誤った認識で報道を繰り返す主要メディアへの苦言も呈している。今にして思うと、ヒラリーに一理あると思わされた。大統領選を巡る主要メディアによる報道そのものに偏りがあると、次のようにクギをさしている。
In 2008, the major networks’ nightly newscasts spent a total of 220 minutes on policy. In 2012, it was 114 minutes. In 2016, it was just 32 minutes. (That stat is from two weeks before the election, but it didn’t change much in the final stretch.) By contrast, 100 minutes were spent covering my emails. In other words, the political press was telling voters that my emails were three times more important than all the other issues combined.
「2008年には、主なテレビネットワークの夜のニュース番組は計220分を政策に関する報道にあてた。2012年には114分だった。2016年にはわずか32分だった。(この数値は投票日の2週間前のものだが、最後までいっても大きくは変わらなかった)対照的に、100分がわたしのメールのことにあてられた。別の言い方をすれば、政治を報じるメディアは有権者に対し、わたしのメールは他の問題をすべて合わせたものより3倍も重要だと伝えたわけだ」
右翼の大富豪が巨額の私財をつかって、ヒラリーを攻撃する情報を流して主要メディアも巻き込み世論操作している実態にも触れる。この点は、前回の本コラム「トランプの元側近・バノンの恐るべき正体」と同じ指摘だ。そこにさらに、ロシアがハッキングで得た情報をリークしたり、デマ情報を流したりした。有力新聞のジャーナリストたちでさえ、なにが真実かを検証する努力を怠り誤った報道をしたという。つまり、まじめな政策論議が大統領を選ぶ判断材料とならなかったというわけだ。