先日、東大寺大仏殿の廻廊で、大仏さまにラブレターを書こうという催しがおこなわれた。
中学生から大学生までの50人が集まり、書家の紫舟〔ししゅう〕さんの指導のもと、筆を手に、思い思いのラブレターを書き上げた。私も見せていただいたが、ある作品に目を奪われた。
生老病死〔しょうろうびょうし〕
全て隣に
あなたがいる
いてくれる
人は生まれ、老い、病み、そして死んでいく。ただひとりの例外もない。
そのいずれの時にも、大仏さまはそばにいて、やさしく見守ってくれている。右手をあげ、「だいじょうぶ、心配しなくていい、だいじょうぶ」と語りかけてくれている。
しかし、大仏さま自身も、奈良時代からずっと平穏無事な日々を過ごしていたわけではない。
平安時代の終わりと戦国時代には、焼かれて溶けてしまったことがある。いずれの時にも復興されたが、大仏さまは奈良時代・鎌倉時代・戦国時代・江戸時代のパーツが接がれた状態になっている。
もしかしたら、みんなをやさしく見守ってくれている大仏さまが、一番傷ついているのかもしれない。
一番傷ついている人が一番やさしい。一番やさしい人が一番傷ついている。そういうことは、私たちの周囲でもありがちなことだ。
この文章は、大仏さまへの最高のラブレターだと思う。
これを書いた高校三年生に逢うことができた。利発そうな眼をした小柄な女の子で、「あんな素晴らしい言葉をよく書けたね」と声をかけたら、ふと浮かんだのだと恥ずかしそうに答える。
きっとそういう家庭に育ったのだろう。
全国から送られてきた408点の作品のなかにも気に入ったものがあった。
見つめられて
ドキドキ
奈良の
大仏