ビジネススキルを活かして楽しむ脱力系子育てのススメ

2017年12月21日

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小川大介 (おがわ・だいすけ)

1973年生まれ。京都大学法学部卒業。学生時代から大学受験予備校、大手進学塾で受験国語の看板講師として活躍。難関中学、国公立大学医学部などへ多数の合格者を送り出す。2000年、さらなる学習指導の理想を追求し、中学受験専門のプロ個別指導教室SS-1を設立。教科指導スキルに、声かけメソッド、逆算思考、習慣化指導を組み合わせ、短期間の成績向上を実現する独自ノウハウを確立する。著書に『小川式[声かけ]メソッド』(宝島社)、『中学受験 基本のキ!』(共著:日経BP社)、『頭がいい子の家のリビングには必ず「辞書」「地図」「図鑑」がある』(すばる舎)、『論理力は小学6年間の国語で強くなる』(かんき出版)など。今年10歳になる男の子の父。

ベテラン講師と過干渉な親との共通点

 講師ミーティングの場でも、「なかなか結果がついてこないんですけれど、でも、まぁ、やるべきことははっきりしているんでやっていくしかないですね。相談というのは、今のところ大丈夫です。また、何をやらせるか困った時に相談させてください」

 なんてことを言ってしまう。

 これと似たことは、子どもの学習に過干渉な傾向のある親御との面談でも時折みうけられます。

 いまどんなことにお困りですか? というこちらからの問いかけに対して、

「困っていること・・・あの子がですよね? 成績が上がらないのは困っていると思いますよ。でも、あの勉強の仕方じゃ私に言わせればやったうちには入らないので、成績が出ないのも当然だと思っています。やる気を出して、自分の勉強だってことを自覚してもらわないと。もうちょっと私の言うことを聞いてその通りやればいいのに。
・・・え、私が困っていることですか? いえ、私は分かっているので、別に困っているわけではないです。ただ、本人がやってくれないことはやっぱり困るので、私の言うことを聞くように、先生から言ってもらえませんか?」

 という会話に終始する方が一定数いらっしゃるのです。

 本当は、親御さんの関わり方を変えることが有効なのに、気づかない。

 子どもがまだ幼いときからずっと勉強を見てきたために、「うちの子のことは誰よりも私が分かっている」という確信があり、自分が関わることで成績も上がってきたという親としての過去の成功体験も持っているために、自分のことを相談しようという発想がわかないのです。

 いわば、経験や知識が増えれば増えるほど、解決が遠のくジレンマ。

子育てにおける「イノベーションのジレンマ」

 この構図は、ビジネス世界における「イノベーションのジレンマ」にそっくりだと私は思います。

イノベーションのジレンマとは、グロービス経営大学院「MBA用語集」を参考にまとめると、「業界トップになった企業が顧客の意見に耳を傾け、さらに高品質の製品サービスを提供することがイノベーションに立ち後れ、失敗を招く」という考え方。革新的な技術やビジネスモデルで従来の企業を打ち破った企業が、大企業になると革新性を失ってしまう状態や、さらに最先端の技術開発をしても成功に結びつかない状態などを、総じて呼ぶ。ハーバード・ビジネススクールのクレイトン・クリステンセンが提唱した。
成功している企業がイノベーションのジレンマに陥る理由として、クリステンセンは、3つの理由を挙げている。

・破壊的な技術は、製品の性能を低下させる。そのため、既存技術で成功している大手企業の多くは破壊的な技術に関心が低いという点。

・技術の進歩のペースは、市場の需要を上回ることがあるという点。技術が市場の需要を上回っているにもかかわらず、トップ企業はハイエンドの技術をさらに持続的に向上することを止められない。そのため、新たに開発した技術に、市場は関心やプレミアムを得ることができない。さらに、比較的に性能が低くても顧客の需要を満たす、新たな技術をもった新規企業に市場を奪われる隙を作ってしまう。

・成功している企業の顧客構造と財務構造は、新規参入企業と比較して、その企業がどの様な投資を魅力的と考えるかに重大な影響を与える。破壊的技術が低価格で利益率が低い、あるいは市場規模が小さいなど、既存の技術で成功している企業にとって魅力を感じず、参入のタイミングを見逃してしまうという点。

 なまじ過去に上手くいったために、自分が手にした「よい方法」「結果の出る手段」を繰り返し使うことに習熟していき、他のアプローチを採用できなくなる点は、学習指導もビジネスも同じですね。

 さきほどの、ベテラン講師のケースと、勉強への関わりに熱心な親御さんのケース、いずれも問題解決につなげるポイントは、現状分析のやり直しと、目標を改めて具体的に設定し直すことにあります。

 今起きていることを正確にとらえ直して、目指そうとしている目標はいつまでに実現させたいのかカレンダーに落とし込み、そこから手前の小さな目標を設定していく。そのうえで、達成するための具体的な手段については、「どんな方法があるでしょうか?」と周囲の知恵を借りる。

 そうすれば、自分ひとりの経験に基づいて、自分の中にある答えを子どもに与えようとする過ちに陥ることもありません。

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