2022年8月14日(日)

中東を読み解く

2017年12月22日

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本当の危機

 ワシントン・ポスト紙はこのほど、トランプ氏の外交政策について総括。「トランプ外交」の形成要因が「選挙公約、直感、型破りの思考」の3つからなっていると報じたが、エルサレムに関する決定は実にこの指摘通りだ。自分を当選させたと確信しているものこそが、同氏の外交政策にとっての土台と言えるだろう。国際的な合意や秩序など既存の枠組みに対する敬意は驚くほど小さい。

 エルサレム問題はパレスチナ自治区を中心に抗議行動が激化しているものの、各国政府の取り締まりもあって、イスラム世界での暴力的な事件は発生していない。むしろ、中東全体で米国とイスラエルに対する不満と憎悪がうっ積、暴発するにはなお時間がかかるような気配がする。

 反面、当面の本当の危機は別の所で起こりそうな予感がある。「実は戦争激化のリスクが急速に高まっている。それはサウジアラビアとイエメンの戦争だ。このまま放置すれば、ペルシャ湾が戦乱にまみれる事態も懸念もある」(ベイルート筋)。

 イエメンを支配するフーシ派が11月、サウジアラビアの首都リヤドやアラブ首長国連邦(UAE)の原発に向け、相次いで弾道ミサイルを発射。同派の発表によれば、12月19日にはサウジの首都リヤドの王宮を狙ってミサイルを発射した。ミサイルはサウジ軍によって迎撃されたという。

 米紙は11月に発射されたミサイルは900キロ飛行してリヤド国際空港の国内線ターミナル滑走路の近くに着弾したとの検証記事を掲載した。これが事実ならサウジの米国製防空網の信頼性はなくなってしまう。この防空システムは日本にも導入されているものだが、エルサレム問題の一方で、“新たなミサイル危機”が中東をさらなる混乱に陥れようとしている。

  

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