海野素央の Love Trumps Hate

2017年12月30日

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海野素央 (うんの・もとお)

明治大学教授 心理学博士

明治大学政治経済学部教授。心理学博士。アメリカン大学(ワシントンDC)異文化マネジメント客員研究員(08年~10年、12年~13年)。専門は異文化間コミュニケーション論、異文化マネジメント論。08年と12年米大統領選挙で研究の一環として日本人で初めてオバマ陣営にボランティアの草の根運動員として参加。激戦州南部バージニア州などで4200軒の戸別訪問を実施。10年、14年及び18年中間選挙において米下院外交委員会に所属するコノリー議員の選挙運動に加わる。16年米大統領選挙ではクリントン陣営に入る。中西部オハイオ州、ミシガン州並びに東部ペンシルべニア州など11州で3300軒の戸別訪問を行う。20年民主党大統領候補指名争いではバイデン・サンダース両陣営で戸別訪問を実施。南部サウスカロライナ州などで黒人の多い地域を回る。著書に「オバマ再選の内幕」(同友館)など多数。

キリスト教右派のトランプ支持理由

 トランプ大統領は、毎週教会に通う敬虔な信者とは到底いえません。しかも3回の結婚歴があり、そのうえセクハラ疑惑の渦中にある大統領です。それにもかかわらず、なぜその大統領がキリスト教右派から支持を受けているのでしょうか。その理由を以下で挙げてみましょう。

 第1は、キリスト教右派のマイク・ペンス副大統領と良好な関係を保ち、同副大統領を称賛し、宗教保守にアピールしているからです。支持基盤の一角を成すキリスト教右派をつなぎ止めるうえで、ペンス副大統領の存在は不可欠です。

 第2は、トランプ大統領が演説で強調する言葉にあります。同大統領は、「我々は、政府を崇拝するのではない。神を崇拝するのだ」「自由は政府からの贈り物ではない。神からの贈り物なのだ」と、神を全面に出して、覚えやすい言葉でキリスト教右派の注意を引くのです。

 第3は、内政において厳格な移民政策を主張していることです。例えばトランプ大統領は、米国社会における人種、民族、宗教といった文化的多様性を促進するために、年間5万件の永住ビザを発行する「移民多様性ビザ抽選プログラム」の廃止を議会に求めました。

 それに加えてトランプ大統領は、永住権がある移民が親族を呼び寄せことができる制度(連鎖移民)にも反対の立場をとりました。これらの政策の提案が、反移民・反難民のキリスト教右派の心を捉えているのです。

 第4は、外交においてもキリスト教右派を満足させる政策を打ち出しているからです。12月6日に発表した例のイスラエルの「エルサレム首都移転」承認は、正にそのものでした。

 第5は、キリスト教右派を意識した演出を行っているからです。この点も看過できません。21日、税制改革法案が米連邦議会で通過すると、トランプ大統領はホワイトハウスでの閣議の冒頭、閣僚と共に、大型減税法案をもたらせてくれた神に感謝の祈りをささげました。この様子をカメラに撮らせ、キリスト教右派にアピールしたのです。

 第6は、前述しましたが、「メリー・クリスマスの復活」にあります。他宗教の移民・難民の価値観ではなく、キリスト教的価値観を重視して「白人文化」を擁護するという明確なメッセージです。

 以上のように、トランプ大統領は特定の支持層を強く意識した政策及び演出に、時間とエネルギーをかなり費やしているといえます。

 2018年もトランプ大統領が「支持基盤第一主義」に固執する限り、米国社会における異文化に対する感受性の欠如を促進し、その結果、社会の分断を一層深化させることは確かです。支持基盤第一主義は、米国社会のみならず国際社会においても、さらなる混乱と亀裂を起こすでしょう。

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