今回のテーマは「キリスト教右派の影響力」です。ドナルド・トランプ米大統領は、12月22日より10日間のクリスマス休暇を、南部フロリダ州にある別荘「マーラ・ア・ラーゴ」で過ごしています。赤色のキャップを被り、白色の半袖のポロシャツを着てゴルフを楽しむ姿が報道されていますが、クリスマス休暇中も日課となっている自身のツイッターに相変わらず投稿を続けています。そこで本稿では、休暇中の書き込みから何が読み取れるのかを明らかにします。
「メリー・クリスマス」にこだわるわけ
約2年前に「トランプの『切り札』人種カード」(2015年12月12日掲載)で指摘しましたように、トランプ候補(当時)は「メリー・クリスマスと言おう」と選挙期間中、繰り返し訴えました。周知の通り、米国ではキリスト教以外の宗教を持つ人に配慮して、「ハッピー・ホリデー」と言います。それが、差別や偏見を含まない「ポリティカル・コレクトネス(政治的公正)」な表現になるわけです。他文化に敬意を示すことは、文化的背景の異なる人々が、共生していくうえで欠かせません。
ちなみに、都内のある外資系企業では、「クリスマス・パーティー」とは言わず、「イヤー・エンド・パーティー」と呼んでいます。一般に、社員はクリスマスの季節を迎えても、メールの挨拶において、他文化に配慮する心理が働いているのか、「メリー・クリスマス」を使用しない傾向がどちらかと言えば強いと聞きました。
12月25日、トランプ大統領は自身のツイッターに「米国民は、メリー・クリスマスと再び言えることに誇りを持っている」と書き込み、大文字でしかも5つの感嘆符を付けて 「MERRY CHRISTMAS!!!!!」と投稿しました。同大統領の支持基盤であるキリスト教右派に向けたメッセージであることは明白です。クリスマスの時期に「ハッピー・ホリデー」と挨拶をされると、感情を害する国民が米国社会には存在するのです。
米国の世論調査機関「ピュー・リサーチ・センター」によれば、2016年米大統領選挙でキリスト教右派の75%がトランプ大統領に、18%がヒラリー・クリントン元国務長官に投票しました。政権が発足するとトランプ大統領は、早速、「イスラム教7カ国入国禁止」に関する大統領令に署名しました。同機関の調査では、この大統領令に関して38%が支持、59%が不支持でした。
ところが、キリスト教右派は、76%が支持を表明しています。約8割が同大統領の反移民・反難民政策を支持しているということです。キリスト教右派は、トランプ大統領の支持基盤の中でも極めて重要な地位を占めています。