2024年11月22日(金)

中東を読み解く

2018年1月30日

 空爆強化に伴い、駐留米軍の規模も増強された。オバマ政権下で最盛期10万人もいた米軍はいったん8400人までに削減された。トランプ大統領も当初は完全撤退を主張していたが、タリバンやISの台頭で第二のシリアになるという米軍指導部の助言を入れ、増派を決定。現在は1万5000人規模になっていると見られている。それでも国土の半分を支配するタリバンを壊滅するには焼け石に水だろう。

“陸に上がったクジラ”

 タリバンの最近の首都でのテロ攻撃の続発は冬場になっても衰えないこうした米空爆への仕返しの意味も無論あるだろう。だが、それだけではない、との見方がもっぱらだ。「トランプ大統領から軍事援助を停止された報復で、パキスタンがアフガニスタンを米国との代理戦争の場にしている」(中東専門家)というのだ。

 トランプ氏は昨年の「アフガン新戦略」の発表の際、パキスタンが過激派を支援しているとして「混乱と暴力、恐怖の温床」と非難。今年元旦には「パキスタンはアフガンでわれわれが追っているテロリストの隠れ家になっている。もうたくさんだ」と不満を爆発させた。

 トランプ大統領が新年のツイートで口を極めてパキスタンを罵ったのは米情報当局が、パキスタンがタリバンを援助しているという具体的な証拠を掴み、それを大統領に報告したからに他ならないだろう。米国は4日、パキスタンによるアフガンの過激派対策が不十分だとして、対パキスタン軍事援助の一部凍結に踏み切った。パキスタンは米国から年間13憶ドルの援助を受けているが、凍結されたのは約3億ドルと見られている。

 パキスタンはタリバン支援を真っ向から否定し、「米国の裏切り」(同国解説者)と強く反発、両国の対立は極度に悪化した。タリバンは元々、パキスタンの軍情報機関ISIがマドラサ(イスラム神学校)から原理主義者をアフガンに送り込んで創設された組織。ISIがタリバンを背後で操っていると見られているのはこうした理由による。

 だが、米国の軍事援助凍結という制裁はうまくいかないとの見方が強い。「アフガン駐留米軍は“陸に上がったクジラ”になりかねない」と米国の元パキスタン大使は米紙に警告している。というのも、パキスタンが軍事援助停止の報復として、アフガン駐留軍への補給ルートを閉鎖するかもしれないからだ。もしパキスタン経由の陸上補給ルートが遮断されれば、駐留米軍は補給が滞り、軍事活動に重大な支障が出ることになるだろう。遮断しないまでも、パキスタンがさまざまな注文を付けて嫌がらせをする懸念は十分ある。


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