2024年4月19日(金)

古希バックパッカー海外放浪記

2018年2月25日

KKの華僑社会を横断する組織

 KKの中心部から数キロ離れたカラムンシン地区にあるショッピングモールには沙巴(サバ)中華大会堂という華僑連合複合施設があった。サバ州の華僑の全体組織の施設である。

 KKの北東郊外には寄宿舎を備えたモダンな校舎の中華学校(小学校、中高一貫校)が運営されていた。KKのお年寄りに聞くと大半が昔の木造建ての中華小学校、中華中学校で勉強している。

中華総商会が保有するオフィスビル。多数の華僑系企業・事務所が入居している

 ガヤ通りの近くには業界を束ねる中華総商会(商工会議所=Chamber of Commerce)がある。中華総商会には5人ほどの職員がおり、若手スタッフから来歴を聞いた。1911年に創設され100年以上の歴史を誇る。1930年代にはジェッセルトン(KKの旧名)の鉄道駅(現在のKK警察署付近)近くに木造二階建ての中華総商会を建設。中華総商会80年史には設立メンバーの誇らしげな集合写真が載っていた。現在会員は約800社。

「詩華日報」が入居しているビルディング

 ガヤ通りには華僑新聞(僑報)が2社あった。“詩華日報”はビルの5階にオフィスがあり編集長以下記者、カメラマン、営業、事務員合計8人くらいの所帯。数日後暇な時間に編集長を訪問して雑談。こうした地元新聞では冠婚葬祭の広告収入が大きいようであった。“亜庇日報”もあったが、残念ながら訪問するたびに話を聞ける人間が不在であった。

出身地の故郷と中国共産党と華僑の関係

 華僑会館は出身地の中国地方政府の華僑弁公室と連携している。例えば海南会館は海南省政府、福建会館は福建省政府、福州会館は福州市政府の在外華僑弁公室と繋がっている。記念行事があると出身地の行政府トップ(地方政府共産党書記)から祝辞が届く。

KK市内を見渡す展望台にて中国から旅行に来た女子三人組。右端はドライ バー兼 ガイドの広東華僑青年。女子3人は南京の高校の同級生

 海南会館では数年に一度中国海南省で開かれる「世界海南華僑交流大会」に代表団を派遣している。この世界大会にはシンガポール、サンフランシスコ、バンコク、マニラ、KLなど世界各地の海南会館メンバーが参加している。写真を見ると中高生による対抗スポーツ大会、音楽会、盆踊り(?)大会、など大々的に親善交流している。

 中国国務院華僑事務弁公室(国僑室)は中国共産党の在外華僑を統括する部署である。こうした華僑世界大会には弁公室主任が参加して祝辞を述べている。少し古い数字であるが国僑室が発表した2013年の在外華僑は5000万人を突破。東南アジアには全体の70%を占める3500万人の華僑がいるという。

 中国の存在感が世界中に高まる中で、華僑と中国共産党との関係も以前に比較して“より緊密に実利を重視する”方向に向かっているようだ。中国共産党の超長期戦略である人口侵略による中華世界拡大が着々と進行している。

⇒第7回に続く

  
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