トランプ・モラー両氏の信頼度
ピュー・リサーチ・センターが発表した世論調査(2018年3月7-14日実施)によれば、61%が「2016年米大統領選挙におけるロシア介入に対して、ロバート・モラー特別検察官が公正な捜査を行うと確信している」と回答しています。同センターによる17年12月の調査では、モラー氏の捜査に対する信頼は55%でしたので、6ポイント増加したことになります。
同様の調査結果が、サフォーク大学(米東部マサチューセッツ州)と米紙USAトゥディが行った共同世論調査(2018年2月20-24日実施)にも現れています。同調査では、58%がモラー特別検察官によるロシア疑惑捜査を信頼し、57%がトランプ大統領のロシアとの共謀を否定する発言を信頼していないと答えています。米国民は、トランプ氏よりもモラー特別検察官に信頼を置いているのです。
トランプ大統領は、これらの調査結果を強く意識したのでしょう。モラー特別検察官が率いる捜査チームの信頼性を下げようと、同特別検察官に対する批判を開始しました。トランプ大統領の応援団FOXニュースの司会者ショーン・ハニティ氏が昨年から指摘していたことですが、同特別検察官のチームメンバーに政治的偏向があり「公正ではない」とトランプ氏は自身のツイッターに投稿したのです。17人のメンバーの内13人が民主党支持者で、9人が同党に献金を行ったというのです。
ロシアは選挙結果に影響を及ぼしたのか?
「16年米大統領選挙におけるロシア介入がどちらの陣営に有利に働いたのか」に関する有権者の回答もみてみましょう。ピュー・リサーチ・センターの世論調査によると、48%が「トランプ・クリントンのどちらの陣営にも有利に働かなかった」と答えているのに対して、43%が「トランプ陣営に有利に働いた」と考えています。一方、ロシア介入がクリントン陣営のためになったと捉えている有権者は、僅か4%です。
ただし、党派別でかなり異なった見解を示しています。共和党保守派の79%が、「ロシア介入は、トランプ・クリントンのどちらの陣営にも有利に働かなかった」と回答しました。2月下旬にワシントン郊外で開催された「保守政治行動委員会(CPAC(シーパック)」年次総会の会場で、筆者が主催団体「米国保守連合」会長マット・シュワップ氏に、「2016年米大統領選挙におけるロシア介入は、選挙結果に影響を及ぼしたと思いますか」と質問を投げかけると、同氏は次のように言い切りました。
「まったく影響を与えていません。1票も変わりません」
その一方で、同センターの調査では、民主党リベラル派の82%が「ロシア介入がトランプ陣営に有利に働いた」と回答しました。「ずばり、米朝開戦はあるのか?米下院議員に聞く」で紹介しましたが、ジェリー・コノリー下院議員(民主党・バージニア州第11選挙区選出)は、ロシア介入が選挙結果に影響を与えたという立場をとっていました。
さらに、「トランプ政権の幹部が2016年米大統領選挙でロシアと不適切な接触を持ったか」という同センターの質問に対する有権者の回答にも注目してみましょう。この質問に対して約6割が「持った」と回答しています。
ところが、共和党保守派は約8割が「持っていない」、民主党リベラル派は約9割が「持った」と答えているのです。つまり、共和党保守派と民主党リベラル派は、ロシア介入による選挙結果の影響及びトランプ陣営とロシアとの接触に関して、まったく異なった立場をとっているのです。