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田部康喜のTV読本

2018年4月27日

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田部康喜 (たべ・こうき)

コラムニスト

福島県会津若松市生まれ。幼少時代から大学卒業まで、仙台市で暮らす。朝日新聞記者、朝日ジャーナル編集部員、論説委員などを経て、ソフトバンク広報室長に就任。社内ベンチャーで電子配信会社を設立、取締役会長。2012年春に独立、シンクタンク代表。2015年10月から東日本国際大学客員教授として地域振興政策を研究、同大・地域振興戦略研究所副所長を兼務。

 このシリーズのなかで、重要な証言と資料を残したのは、北朝鮮の元高官として脱北し韓国在住だった、ソン・ミンテ(仮名)である。昨年亡くなった。

 「演説やしぐさによって、人民に感謝を示す『集団ショー』に過ぎない。高度なねつ造である。父や祖父をはるかに超えている」という証言である。

 ソンは、米朝首脳会談や北朝鮮による核実験施設の放棄など、最近の動きについて予言している。それは、正恩が主導するもので、世界はそれによって混乱させられるというものである。

 「正恩が戦争も辞さない独裁者だと思われているが、180度転換して平和を成し遂げたいと一歩進んだとしたらどうするのか。正恩の深遠な戦略に世界は巻き込まれていくことだろう」

 「人民を掌握し、党を掌握し、軍をコントロールした。正恩は思想戦が得意である。世界の政治家やジャーナリスト、専門家は対話の餌に飛びつけば、正恩の深遠な渦に巻き込まれていくだろう」

躊躇なく犯罪行為をするゲーム・チェンジャー

 第2集「39号室 外貨獲得の闇」は、一党独裁である党のなかに父親の正日時代に作られた「39号室」が、政府機関や党の組織ごとにある貿易会社が合法あるいは非合法に、「忠誠金」を差し出して、正恩ひとりが使用できる「革命資金」となっている仕組みを明らかにした。

 教育省や外務省など、政府機関の下にそれぞれ貿易会社が設置されている。党の偵察総局や国家安全保衛部にもある。39号室が非合法取引をやっていると認識は誤りである、と元幹部が証言する。つまり、アヘンや覚醒剤などの密売など非合法活動は、党の組織がやっているのであって、上層部は知らぬ顔をしている、というのである。

 39号室に集められる「革命資金」は、年間に300~600億円と推定されている。39号室にかかわっている人員は数十万人である。

 国連による制裁の強化によって、こうした外貨獲得も困難になってきた。それに代わるのが、サイバー犯罪である。バングラディシュの中央銀行からカネが引き出されて、米国のFRBに送金され、それが東南アジアに回ってマネー・ロンダリングされていた。北朝鮮がからんだウィルスは「ラザルス」と呼ばれる。

 世界的なサイバーセキュリティ―会社の幹部は、次のように証言する。

 「彼らの技術が高度であるというのではない。躊躇なく犯罪行為をすることがゲーム・チェンジャーなのである。仮想通貨なども盗んでいくだろう」

 第3集「核・ミサイル 隠された真意」のなかで、米政府のアドバイザーを務める、テ・ヨンホは次のように指摘している。

 「核の凍結というのは、保有を認めることにつながる。凍結が長期間続けば、非核化は難しくなり、国際社会は核保有国と認めざるを得ない。それが、正恩の戦略である」

 「米国は、存在を脅かされる重大な事態として、軍事行動も辞さない。今後どうなるか? それはコメントしないほうがいい。コメントは控えさせていただきたい」と。

  
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