カフェでいきいき
この数年、社内で障がい者に働いてもらえる場として注目されているのが、レストラン、カフェなど飲食サービスだ。最初に始めたのではヤマト運輸元社長でヤマト福祉財団を設立した小倉昌男氏が1998年に立ち上げた銀座のベーカリーチェーン「スワン」がある。いまでは直営店4店のほかフランチャイズ22店を展開、約350人の障がい者がここで働いている。7~8割は知的障がい者で、女性が6割。ここは一般の来客もあるため、たまに釣銭の間違いなどミスが起きる。だが、「それを経験することが障がい者にとって自信にもつながるので、ミスを恐れてない。接客をすることで、内向きだった性格の改善につながるケースもある」(佐藤光浩事業開発部長)と話し、開業20年のノウハウが生かされている。
このほかカフェを開く企業が増えている。第一生命は本店内に07年に社内の福利厚生を目的にカフェをオープンし、現在は3店で27人の障がい者が働いている。KDDIは社員用のカフェを16年に開き、大阪、新宿などにも拡大し、現在約15人の障がい者がいる。障がい者が働ける環境を目指して08年に別会社「KDDIチャレンジド」を設立、17年6月時点で403人を雇用、雇用率は2・38%になっている。カフェで働く障がい者は離職者が少なく、苦手と思われていた接客に生きがいを見出すケースもあるという。
KDDIではカフェチームを含め携帯電話の分解、メール便の管理など約15のチームに分かれて仕事をしており、月収は約15万円弱にはなっているという。また、電通はオフィス環境を見直す中で、障がい者が働く社員用カフェの開設を検討している。
HP作成も
キユーピーが障がい者雇用のために設立した東京都町田市にある子会社「キユーピーあい」を訪問した。03年に設立、当初障がい者は6人でスタートしたが、いまでは親会社が出すドレッシングなどの新商品の販促パンフレットやポスターの制作、伝票照合など17分野の仕事を担い、障がい者は67人となっている。3、4月は新商品関連の業務が多く、作業室内には何種類ものチラシなどの販促物が納入先ごとに並べられていた。
この会社の特徴は、健常者の営業担当がいて、彼らがグループ会社や社外からの仕事を取ってきて分野ごとに振り分け、障がい者の雇用を広げている点だ。急ぎの業務も発生するが、期日までに納品できるように管理し、分担して進める。キユーピーグループ全体では530人の障がい者を雇用、雇用比率は3・30%(物流事業を除く、昨年12月)と頭抜けて高く、障がい者雇用の「優等生」企業とも言えそうだ。
ホームページ(HP)の作成をする仕事は4人が担当、福祉団体のHPなど約40社の制作を請け負い、パソコン画面と向き合っている。新しいIT技術を勉強しながら、動きを取り入れた複雑なHPも作成している。今年は特別支援学校の卒業生2人を新入社員として取ったが、中途社員も多く受け入れている。障がい者の適正を見極め、定期的なカウンセリングなども行っているため、何年も働く障がい者が多く、退職率は低いという。
障がい者の職場を社内で見つけるか、社外に求めるか、企業にとっては難しい選択だ。これからはAI(人工知能)の導入などにより、単純な仕事はAIに取って代わられる可能性がある。だが、企業にとって障がい者の雇用は避けて通れない義務だ。障がい者のとって楽しく働ける職場であるのなら、社外であっても法定雇用率を達成するためのひとつのオプションにはなるのではないだろうか。
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