2024年4月25日(木)

日本の新常識

2011年4月4日

 一方で日本では、政党が投票するための基準、あるいはブランドとして弱く、個々の政治家が自前の地盤で戦います。政党も年功序列の魅力的でない組織になっています。各政治家は、自分の当選が重要で、政党のブランドイメージを向上させようという意識は低い。日本の政治は、より優秀でしがらみの無い人が政治家になり、出世しやすい環境にならなければなりません。そのためには、組織と資産のある候補者が選ばれやすい現行制度を改め、政党に投票する、政党中心の選挙にしていく必要があるでしょう。

――投票時に「候補者の名前を書く」というのも世界的には珍しいそうですね。

菅原特任准教授:日本の大部分の選挙では「自書式」という投票方式を採用しています。こう言うと難しそうですが、要するに投票用紙に筆記用具で候補者名を書くという、いつも投票所でみなさんが行っている方式のことです。しかし、私たちが慣れているこの投票方式も、世界的にはかなり珍しい部類に入ります。日本と同じように人に投票する国でも、多くは「記号式」という投票方式を採用しています。予め候補者が書いてある投票用紙に印をつけたり、穴を開けたり、あるいは電子投票の類もほとんど記号式に分類されますが、いずれにしろ多くの国では候補者名を自分で書かないわけです。

 日本では、この方式のために、候補者は名前を覚えてもらう必要があります。だから、選挙運動も候補者名を強調した方向に発達しており、候補者の氏名と顔を強調した選挙ポスターや、名前をひたすら連呼するだけの街宣車が目立ち、候補者間の政策討論などに労力は使いません。

――都市部の若い世代の投票率が低い理由をどのように分析されていますか。

菅原特任准教授:若年層の投票率が低いのは、政治から遠いからです。社会に出る、家庭を持つ、子供が成長するなどを通じて、個人にとっての政治の重要性が増していくわけですから、若い人の投票率が高齢者に比べて低いこと自体は自然なことかもしれません。ただ、もっと上がる要素もある。

 2005年のいわゆる「郵政解散選挙」で自民党が圧勝したのは、20代から50代にかけてのより若い世代の投票率が上がり、自民党に投票したからでした。『世論の曲解』(光文社新書)でも触れていますが、この選挙の結果も、若い世代の投票行動が批判されたり、またそれを否定する論が展開されたりと、色々誤解や曲解がありましたが、正しい見方としては、都市部での若年・中年有権者が多く自民党へ投票したということです。

 これはつまり、今まで投票していなかった人=主に都市部の若年・中年世代が投票することによって、選挙結果が劇的に変わるということです。その埋もれた一票の力を、もっと当人たちも政治家も理解し、今後につなげていけば、投票率の老若格差は縮まるでしょう。

 そのためには、若い世代も投票したいと思うような選択肢が必要です。もっと都市部の若年・中年層を向いた政策を提示し、幹部やリーダーが年功序列ではなく能力で選ばれ、若い層が活躍するような政党が登場する必要があります。

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