2026年4月25日(土)

オトナの教養 週末の一冊

2026年4月25日

 今年4月、米国主導のアルテミス計画で、NASA(米航空宇宙局)などの有人宇宙船が約10日かけて月を周回し地球に戻った。1972年のアポロ17号以来、約半世紀ぶりに人類が月に近づいたことになる。

4月6日(米・東部時間)、オライオン宇宙船から撮影された、月面に沈む地球(NASA)

宇宙開発の最前線

『宇宙にヒトは住めるのか』(ちくまプリマ―新書)。林 公代(はやし・きみよ):神戸大学文学部英米文学科卒業。(財) 日本宇宙少年団情報誌編集長を経て2000年からフリーライターに。日本宇宙少年団では子供たちに毎月出す情報誌を担当、子供たちとともに宇宙の魅力の虜になり、以来、20年以上にわたって宇宙関連の話題――宇宙飛行士、宇宙関係者へのインタビュー、NASA、ロシア、日本のロケット打ち上げ、 皆既日食、すばる望遠鏡(ハワイ)、アルマ望遠鏡(南米チリ)――などを中心に、幅広く取材を続けている。著書に『宇宙就職案内』(ちくまプリマー新書)、『未来が楽しみになる 宇宙のおしごと図鑑』(KADOKAWA)、共著に『さばの缶づめ、宇宙へいく』(イースト・プレス)、『宇宙に行くことは地球を知ること 「宇宙新時代」を生きる』(光文社)など。

『宇宙にヒトは住めるのか』(ちくまプリマ―新書)は、長年宇宙分野を取材してきたライター林公代さんが、月面農場からモジュール型居住施設、地上の役10倍の速さで進む老化まで、宇宙開発の最前線に幅広く迫った一冊である。

―― 今回の本は1月刊行ですが、4月のアルテミス計画の月周回飛行にも合わせた?

「ちょうどタイミングが一致してくれました(笑)」

 著者の林さんによれば、昨年国立天文台の花見で出版社の編集者に会った際、「宇宙にヒトは住めますか?」と聞かれた由。

 高度400キロのISS(国際宇宙ステーション)に各国の宇宙飛行士が2000年から住み続けていることは宇宙関連業界の常識。それなのに一般の人はISSのことをよく知らない、と改めて驚いた林さんは、では文系の高校生でもわかる宇宙の本を書いてみようと、本書の執筆を思い立ったという。

―― 第一章の月面農場の話題は衝撃的ですね。月産月食(月で育て、月で食べる)を、千葉大宇宙園芸センターの後藤英司教授が主導して、日本が世界をリードしている?

「現在のISSでの食べ物はレトルト食品とフリーズドライなどの宇宙食。新鮮な生野菜はほとんどない。かといって地球から運ぶと片道3日、1キログラム当り1億円から2億円も運送費がかかります」

 後藤教授の月面農場では8種の作物(イチゴ、トマト、イネ、サツマイモ、ジャガイモ、キュウリ、ダイズ)を育てている。品種改良、LED光、水耕栽培中心で、矮性のため小空間でもよく育ち栄養豊か、味もいいのだ。

 「しかも、食べる人間の排泄物を含めた資源循環まで考えての月産月食です。NASAなど外国の宇宙食は効率優先ですが、美味しさにもこだわるのが日本らしさ。実際、食べ物の味は重要で、よくないとストレスや宇宙飛行士間の不仲にも繋がりますからね」

 食べ物の美味しさが「食のQOL(生活の質)」ならば、快適な住まいは「住のQOL」とも言え、日本はこの分野にも大きなこだわりを持っている。


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