「赤泊のIQ方式は成功した」
キロ単価上がり経費も削減
赤泊のIQ方式は、泉田裕彦・新潟県知事(当時)のトップダウンにより、2011年から5カ年計画のモデル事業として、ホッコクアカエビのエビ篭漁業者を対象に始まった、日本初の本格的なIQ方式導入事例だ。対象海域は佐渡海峡一帯(右上図参照)、対象の漁業者は4経営体。16年にモデル事業は予定通り終了し、現在も漁業者主体の形でIQ方式は継続されている。
結論から言えば「赤泊のIQ方式は成功した」(県水産課の丸山克彦課長)といえる。県の委員会が出した報告書によれば、総漁獲量がTACに達しなかったため、漁獲量の制限による資源回復の効果については判断を保留しつつも、モデル事業開始以後は徐々に回復傾向にある。また、開始前に比べ5年間で総漁獲量は約25%減少し、一方でキロ単価は1432円から1783円に上昇したことにより、総漁獲額は横ばいを維持している(右下図参照)。
漁業者の経営状況も、11年に4経営体の平均で850万円の赤字だったのが15年に310万円の黒字に転換した。また4経営体中、13年に一つが廃業したものの、2経営体は乗組員が経営を引き継いで代替わりに成功している。
県佐渡振興局農林水産振興部の渡辺和博副部長は「一番大きい成功要因は、獲れる量の上限が決まっているため、値が高い時に良いエビを獲るようになったこと。安い時に無理に操業しなくてもよくなり、経費削減ができた」と語る。前述の〝早い者勝ち〟が起こらず、値崩れの恐れがないのだ。結果として、同じ漁獲量でも漁業者の収入は上昇することになる。
モデル事業においては、そうした「漁獲量あたりの利益増大」を促すための施策を打った。まず一つが「1隻あたりの篭数の倍増」である。IQ方式導入前、赤泊の4経営体はそれぞれ2隻の漁船を保有し、ローテーションを組んで操業していた。1隻あたりのエビ篭の上限数が県の漁業許可方針により決められていたため、エビ篭を増やすには船を増やすしかなかったのだ。
しかしIQ方式により漁獲量は経営体ごとに割り当てられたため、その中で、エビを獲る船を分けたところで意味はなく、2隻保有する分だけ無駄な出費になる。そこで県はIQ方式を実施している経営体に限り、1隻あたりの篭の上限数を倍にした。結果、赤泊の経営体は同じ漁獲量を1隻で達成できるようになり、大幅な経費削減に繋(つな)がった。