Washington Files

2018年6月16日

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斎藤 彰 (さいとう・あきら)

ジャーナリスト、元読売新聞アメリカ総局長

1966年早稲田大学卒業。68年米カリフォルニア州立大学バークレー校大学院修士課程修了、70年読売新聞入社。ワシントン常駐特派員を2度務めた後、アメリカ総局長、東京本社取締役調査研究本部長などを歴任。近著に『中国VSアメリカ』『アメリカはカムバックする!』(いずれもウェッジ)がある。

最も点を稼いだのは実は、中国

 しかし、今回首脳会談で最も点を稼いだのは実は、中国だった。この点についても、多くの米マスコミが舌鋒鋭く論じている。

 「米朝首脳会談で予期せざる勝者=中国」、「米朝サミット、最大の勝者は中国」(ニューヨーカー誌)、「歴史的米朝サミットのビッグ・ウイナーは中国か」(CBSテレビ)、「米朝首脳会談の最大勝者は中国」(ワシントン・ポスト)といった見出しで始まる解説だ。

 では実際に、中国からみて米朝首脳会談の結果はどのように映ったのか。

 まず最大の成果は、去る3月、トランプ大統領が金委員長の申し入れを即刻受け入れ首脳会談開催が決定以来、金委員長が2度にわたり訪中、習近平国家主席との直接会談により、関係修復の糸口をつかんだことだ。

 というのは、金正恩氏が2011年、最高指導者となって以来、中国との主な交渉窓口だった叔父の張成文氏の処刑を命じたことなどによって両国関係は疎遠となり、両指導者同志による直接会談は一度もなかったからだった。それまで中国は、金委員長の下で米朝関係がにわかに加速し、その結果、朝鮮半島に対する中国の影響力が相対的に減退することを懸念していたとされる。

 ところが、史上初の米朝首脳会談開催の直前に、2度にわたり、それも金委員長の方から習近平国家主席を訪ねて会談し、朝鮮半島情勢をめぐり意見交換したことで、中国の国際的立場も示威できた。年内早期の習氏の初訪朝も視野に入っている。

 とくに去る5月7〜8日の両日、中国・大連で行われた2回目の中朝首脳会談では、金委員長が朝鮮半島の核政策に関連して「韓国および米国が平和実現のために前進的で同時進行的な措置をとる」ことを前提として「半島の非核化に取り組む」との基本姿勢を表明したが、米朝会談でもこの点をトランプ大統領に説明し、結果的に中国側の期待通りの成果を引き出した。

 第2に、トランプ大統領が米朝首脳会談後の記者会見で、米韓合同軍事演習の中止に言及したことだ。

 中国はこれまで6カ国協議などの場を通じ、朝鮮半島緊張緩和の一環として、北朝鮮に対しては核開発および核実験の凍結、そして米国に対しては米韓合同軍事演習の中止を同時並行的に要求してきた。今回、トランプ大統領自身がその中止を表明したことは、中国にとってはまさに「予想外の朗報」だったに違いない。

 さらにこれと関連して、大統領が将来的な在韓米軍撤退まで示唆する発言をしたことは、
今後朝鮮半島における中国の影響力を堅持する上でプラス材料となった。

 第3点目として、大統領が会見の中で、中国による対北朝鮮経済制裁緩和措置を容認したとも受け取れる発言をしたことだ。大統領は「習近平国家主席は北朝鮮との国境を(経済制裁の目的で)閉鎖してきたが、ここ数か月はそれを少し緩めてきた。それはOKだ。彼は素晴らしい人物で私の友人だ」と語っている。

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