日本の「無人タクシー」への取り組み
日本では、自分の車両でタクシー営業をすることは「白タク」に当たるとして禁止されている。そのため、ウーバーはタクシーの配車サービスのみを行っている。
タクシーの配車サービスについては、ソフトバンクが中国のライドシェア大手DiDi(滴滴出行)との協業を発表し、合弁会社の設立を視野に、今年中に大阪府、京都府、福岡県、東京都などで実証実験を実施する予定。
また、ソニーとソニーペイメントサービスは、タクシー会社7社と、配車サービスアプリなどを開発・運営する準備会社「みんなのタクシー」を5月に設立した。
すでにDeNAは、横浜市と川崎市で「タクベル」というスマホアプリによる配車サービスを展開しており、今夏には神奈川県全域、その後、全国に拡大することを計画している。6月1日時点で、対応するタクシー会社は47社2773台となっている。
DeNAは、無人タクシーへの取り組みも行っている。2015年5月に、ロボットの開発・販売を手がけるベンチャー企業のZMPと合弁会社「ロボットタクシー」を設立して、実証実験やデモンストレーションを実施してきた。今年になって、その関係を解消し、新たに日産自動車と「Easy Ride」という無人タクシーのプロジェクトを開始した。
DeNAと日産自動車は、3月に横浜のみなとみらい地区で、2週間の実証実験を行った。セーフティドライバーが搭乗する自動運転車に、一般モニターを乗せて短いコースを往復した。他にも、同様の実証実験は行われているものの、日本の無人タクシーへの取り組みは大きく遅れている。
カリフォルニア州では、公道における自動運転車の走行試験を認可してきたが、今年4月には完全無人の自動運転車の走行の申請を受け付けると発表した。
これまでのセーフティドライバーが搭乗する走行試験に加え、遠隔操作が可能であるという条件付きで、完全に無人の走行試験、さらに実際の一般利用(現時点では商用利用は不可)についても、カリフォルニア州車両管理局(DMV)が設定した厳しい要件をクリアすれば認可するという。早速、ウェイモが無人の走行試験の申請をしたと伝えられた。
アリゾナ州には、自動運転車の走行試験についての明確な規則が存在せず、カリフォルニア州のように各社に試験や事故の報告も義務付けていない。ウーバーの事故をきっかけに、その野放し状態から、一転して、規制の強化が進んでしまうかもしれない。
無人タクシーの実現には行政の積極的な関与が必要だ。事なかれと禁止するのではなく、十分にリスクを考慮した上で高いハードルを設定する。企業は、それを技術によって越えるためのチャレンジをする。
国土交通省の自動車局の「自動運転の実現に向けた取り組み(平成30年1月)」では、2020年までに限定区域での無人タクシー(無人自動運転移動サービス)を導入するという目標が掲げられている。
その目的は、高齢者などの交通弱者の解消であり、限定地域とは主に過疎地域が想定されている。交通弱者の解消は重要な課題だが、それだけでは大きな投資を伴う最先端の技術を投入できる市場にはなりにくい。行政が主導する実証実験に参加する企業は、その先の事業化を視野に入れているのだろうか。