2024年11月23日(土)

古希バックパッカー海外放浪記

2018年7月8日

モンゴル経済は遊牧民の犠牲の上に成り立っているのか

 ガラ君によると遊牧民が生産した家畜の価格は低い。他方で、ロシアから輸入する石油・ガスという燃料価格は家畜と比較して相対的に高い。中国から流入する食料品も同様。この交換率を遊牧民に有利に変更すれば物価水準が上昇してしまう。

 現在のモンゴルでは、遊牧民が犠牲になって都市生活者を支えているとガラ君は指摘。この話を聞いて一昔前の日本の生産者米価を巡る議論を思い出した。

モンゴルの食堂の定番、ハンガリー由来の牛の煮込み料理ゴリヤシ。ライスとサラダと一緒にワンプレートで提供される。山羊ミルクたっぷりの少し塩が入ったモンゴルティーと一緒に食する

子供にお金をかけるのはモンゴルも同じ

 ガラ君一家の一人娘アヤちゃんはエルデネト市内の日本語幼稚園の年少組に通っている。ミユキさんの説明では、この日本語幼稚園には日本人の先生が3人いるという。日本の童謡や童話を日本語で習っている。

 アヤのお誕生日会の写真を見ると、大々的にアパートの部屋を飾りつけして50センチ四方のバースデーケーキが真ん中に鎮座していた。お友達も15人くらい参加。

 さらにアルバムを見てゆくと、幼稚園のクリスマスパーティーも日本の幼稚園と同じ水準の華やかさである。中国の大都市では中国語・英語のバイリンガル幼稚園が大繁盛であるが、モンゴルの日本語幼稚園には驚いた。

トラックに満載されているのは乾燥させた牛糞。牛糞は円盤状なので拾い集めるのが容易。市場では牛糞をビニール袋に入れて売っている

観光業者の叫びは“カムバック・ジャパニーズ!”

 10月2日。エルデネトからウランバートルの定宿のゲストハウスに戻ってきた。オーナーは40歳くらいであろうか。元々ウランバートルでは老舗になるゲストハウスでマネージャーとして10年間勤め上げ、2年前に独立したという経歴である。

 ゲストハウスと旅行代理店を経営しているが、なんと1年のうち、実質3カ月で1年分を稼ぐという。つまりモンゴル草原の夏場の7月~9月の3カ月間で1年分を稼ぐ。今年も7月以来累計900人の宿泊客を受け容れ、700人のツアーを手配。

長距離バスの中でポーカー賭博に興じる男たち。モンゴルでは市場やバスターミナルなどで昼間からトランプ賭博をする男たちを見かける。中国と異なり女性は参加しないようだ

 オーナー氏は酒好きで、オジサンが投宿すると必ず一緒にリビングのソファーで酒盛りとなってしまう。この日も夕刻からビール、ワイン、そしてモンゴルウオッカ(40度くらい)と長丁場。

 過去10年で日本人旅行者は激減したという。特に若者のバックパッカーはほとんど見なくなったという。確かに私も1カ月余りのモンゴル滞在中に一人も邦人バックパッカーに遭遇しなかった。代わりに韓国人バックパッカーが増加して邦人の減少を埋め合わせているという。

 モンゴル観光はウランバートルから東西南北に放射状に道路や鉄道が走っているので、地方を旅行するたびに一度ウランバートルに戻ることになる。ウランバートルの定宿に戻ると毎度必ず韓国人バックパッカーと一緒になった。モンゴルに限らず世界各地で全く同様の現象を見てきた。やはり日本の若者の海外旅行離れは長期トレンドなのであろう。

 

 オーナー氏から日本の若者がなぜ海外旅行に興味を持たなくなったのか解説を求められた。日本の若者の興味がバーチャル世界に向かっていること、さらに仲間内での交流だけで満足していること、総じて内向き志向になっていることを説明。しかしそれは単なる現象面のことである。社会的背景や根本的原因は何であろうか。

 経済成長が頭打ちになり相対的に国力が低下して国際社会での存在感が薄れてくるに従い、に海外に出るという気概が無くなってきたように思う。

 オーナー氏によるとモンゴルでは中国人旅行者は見かけないという。中国商人を偶に見かける程度と。欧州人は北からシベリア鉄道でモンゴル入りする旅行者が大半。ヨーロッパ各地からモンゴル・中国まで数百ドルという低運賃が魅力らしい。

⇒第4回に続く

  
▲「WEDGE Infinity」の新着記事などをお届けしています。


新着記事

»もっと見る