この熱き人々

2018年8月23日

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吉永みち子 (よしながみちこ)

1950年、埼玉県生まれ。85年、『気がつけば騎手の女房』で大宅壮一ノンフィクション大賞を受賞。著書に『母と娘の40年戦争』(集英社文庫)、『怖いもの知らずの女たち』(山と溪谷社)、『試練は女のダイヤモンド』(ウェッジ)などがある。

 「3年次で、文系と理系から半々の学生が集まっている科学史・科学哲学科を選択したんですが、しばらくして、来るところを間違えたって気づきました。オリエンテーションでギリシャ語で挨拶する人がいたり、ラテン語を習うとか、これはかなわんと思いました。大学院の修士課程で再び昆虫に戻りました」

 ところでアリを研究の対象に選んだのには何か理由があったのだろうか。

 

 「昆虫に戻って最初の1年くらいは、研究対象を決めずに論文だけを読んでいたんですが、学会に出席したときに琉球大学の辻教授と出会って、アリの面白いテーマがあるけどやってみないかと声をかけてもらったんです。小学校の時から自由研究でいろいろな昆虫をテーマにしたけど、アリはやったことがなかった。小さいから標本にするのが大変そうだったし。でも、ここでアリに出会ったんならアリをやってみようと思ったんです」

 働かないアリの存在が確認されている三重県紀北町には、5月から8月の調査シーズン中、少なくとも月に2回はサンプルの採集に行く。いかにも昆虫類が多く存在しそうな大学向かいの吉田神社や吉田山も、フィールドワークの現場である。

 リュックを背負って外に出ると、まるで写真撮影だということを忘れたかのように、真剣なまなざしで地面を見つめている。その様子は、研究室の中でDNA解析や論文の作成をしている姿からは想像できない、少年のように無邪気な好奇心にあふれていた。 

どばた しげと◉1982年、岡山県生まれ。2010年、東京大学大学院博士課程修了・博士号取得。日本学術振興会特別研究員等を経て、14年より京都大学大学院農学研究科助教。専攻は昆虫生態学。

中庭愉生=写真

  
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◆「ひととき」2018年8月号より

 

 

 

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