栖来ひかりが綴る「日本人に伝えたい台湾のリアル」

2018年9月25日

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栖来ひかり (すみき・ひかり)

台湾在住ライター

京都市立芸術大学美術学部卒。2006年より台湾在住。日本の各媒体に台湾事情を寄稿している。著書に『在台灣尋找Y字路/台湾、Y字路さがし』(2017年、玉山社)、『山口,西京都的古城之美』(2018年、幸福文化)、『台湾と山口をつなぐ旅』(2018年、西日本出版社)がある。 個人ブログ:『台北歳時記~taipei story』

「親日的な部分」だけを拡大して語ることなかれ

 1957年台湾嘉義市生まれの蘇啓誠氏は、大阪大学大学院を卒業後、官僚として30年近くに亘って日台のために心を尽くした優れた外交官だった。しかし、大使館にあたる大阪の領事館が「台北駐大阪経済文化弁事処」という名前である事からもわかるように、台湾と日本は正式な国交がない。また中国の「一つの中国」という主張を「尊重する」立場の日本政府との外交においては、これまでもさぞかし難しい局面が数多あったと察する。

 世界のなかで国としての立場が定まらない台湾。充分な賠償や補償を受けていない台湾人従軍慰安婦の方々や、台湾籍元日本兵・軍属の方々など、くすぶり続けるわだかまりも少なくない。何故なら、戦前には台湾を領土とし、敗戦と共に放り出し、1972年に再び断交したのは他でもない日本だからである。台湾の未来を決めるのが台湾人自身なのは勿論だが、日本もまた、台湾の行く末に幾許かの責任を負っている。さらにいえば、東アジアにおける安全保障の観点でも、民主主義的な価値観を共有する台湾の主権を応援することは、日本にとっても重要な事柄といえる。

 災害が多く、旅行者としても多くの台湾人を受け入れている日本では、いつまた先日の関西空港のような事があるかわからない。何かしら問題が起こった時にすぐさま日台の連携を計り、台湾の状況に心を寄せることが出来るよう、日頃から台湾への認識や理解を深める事、それが今回の痛ましい出来事から日本人が学び得ることではないだろうか。

「親日」的な部分のみを拡大して語るのではなく、未来的な関係を日台が築いていくのを願うとともに、お亡くなりになった蘇啓誠さんの魂が安らかならんことを、心よりお祈り申し上げます。合掌。
 

栖来ひかり(台湾在住ライター)
京都市立芸術大学美術学部卒。2006年より台湾在住。日本の各媒体に台湾事情を寄稿している。著書に『在台灣尋找Y字路/台湾、Y字路さがし』(2017年、玉山社)、『山口,西京都的古城之美』(2018年、幸福文化)がある。 個人ブログ:『台北歳時記~taipei story』

  
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