那覇市の中心部から本島を北上。車でおよそ1時間、左に東シナ海を望む地に建つ「ザ・ブセナテラス」が見えてくる。2000年、首相だった小渕恵三(故人)が執念を燃やして実現させた「沖縄サミット」のメイン会場だった高級リゾートホテルだ。小渕自身はサミット前に病魔に倒れ、ついに自らの夢を見ることはできなかった。
ブセナリゾートがある恩納村は、沖縄でも屈指のビーチを抱え、その景観は他を圧する。今や、5つ星のホテル、「リッツ・カールトン」「マリオット」がオープンし、またハワイの最高級ブランド、「ハレクラニ」も建設の真っただ中である。
現在、沖縄を代表する高級リゾートホテル「百名伽藍」を経営する一方、沖縄経済同友会代表幹事も務める渕辺美紀によれば、手軽に行けて楽しめる沖縄だけでなく、ラグジュアリーな沖縄という面がようやく生まれてきた、という。
観光ブームを後押しする
第二滑走路とIR
20年に完成する第二滑走路が言うまでもなくさらなる観光客を呼び込む大きな武器となる。が、現在の立地では第二滑走路へ向かう航空機は第一滑走路を横切らねばならず、このままでは2本の滑走路を十分に使い切ることができない。第一、第二それぞれの滑走路の間を埋め立て、ホテルや商業施設を併設した新ターミナル建設計画がある。観光立県を目指す沖縄にとって、政治的な判断が求められ続ける。
政治的な大きな判断に委ねられると言えばIR(統合型リゾート)法案の可決により、日本を挙げてカジノ誘致が叫ばれている。カジノばかりに目が行くが、その法案の通りホテル、娯楽施設といったいわば観光インフラこそが重要であり、その意味では確かな経済効果が見込めるものだ。
沖縄県知事選の2日前。米大手カジノ運営会社「シーザーズ・エンターテインメント」の国際開発社長スティーブン・タイトはこんなメッセージを公にした。
「カジノ候補地として沖縄は素晴らしい可能性を秘めた土地だ」
沖縄へのラブコールだ。同社は元米国務副長官、リチャード・アーミテージを雇い入れ、日本の外務省北米2課を〝秘書〟代わりに使いながら大胆な営業を仕掛けている。日本でのカジノ運営に興味を持っているのは、米大手の「MGMリゾーツ・インターナショナル」「ハードロックカフェ」など多数にのぼる。そうした彼らにとり、自民党内部で囁かれていた内容は無視できない。政治的な配慮から、自民党候補、佐喜眞淳が当選していれば沖縄へのカジノ誘致は無条件で行われていたという。カジノ誘致は、約270ヘクタールの敷地を持つ「キャンプ・キンザー」の返還跡地に予定され、カジノを含む基地の一体開発におよそ5000億円もの振興策を用意しているとも言われていた。もちろん、カジノは沖縄の観光インフラの目玉でもあった。だが、カジノ反対を表明している玉城デニーの当選で絶望的になった。