さらにナビタイムでは過去の統計データから混雑状況を予測して走行ルートを案内している。今年からはゴールデンウィークやお盆など混雑期の渋滞予測の情報提供も始めた。「渋滞予測を行えるくらいプローブデータが蓄積できてきた」という。
欧米では道路交通情報の提供はプローブデータが主流になりつつある。例えば米サンフランシスコの都市圏では一部の道路以外で定点での観測を止め、独HERE Technologiesのプローブデータによる交通管理に移った。
HEREは独アウディ、BMW、ダイムラーなどと資本関係にあり、これらの自動車会社が販売するコネクティッドカーからプローブデータの収集を行っている。「コネクティッドカーのセンサーデータも利用し、行政から事前に情報を得ていなくても、通行止めなどの規制を検出することが可能になっている」(同社交通情報部門)という。
前出の牧村氏は「世界ではオンラインでプローブデータを取りつつ、道路管理者側から運転に介入することで渋滞解消や安全性を高めるアクティブトラフィックマネジメントが主流だ。日本でもきたるべきコネクティッドカー時代を見通したプローブデータを生かした道路交通管理が必要だ」と指摘する。
これだけ各社が独自で渋滞情報を収集できるようになっているのに、なぜ民間事業者はJARTICやVICSセンターから情報を買い続けているのだろうか。関係者は「欲しいのは渋滞情報ではなく、それとセットで提供される各道路管理者などから集めた規制情報だ」と口を揃える。各事業者は自らでは取得することができない速度規制や工事情報のみを安く提供されることを望んでいるが、現状ではそれは認められていないという。
規制情報は安全で円滑な道路交通のために不可欠なもので広く民間事業者に提供されるべきものではないか。現に、平均月間利用者数が3000万人(ニールセン デジタル調べ)を超える「グーグルマップ」に規制情報は表示されていない。JARTICはこれについて「統一した条件下なら誰でも提供できる。事業者が独自に作成した地図に道路交通情報を表示するには、セキュリティの観点からJARTICの指定する通信会社のサービスにより、JARTICの用意する共通IP網にアクセスしてもらう必要がある」としている。
民間事業者のレベルは向上しており、早晩JARTICの情報を購入しなくても渋滞予測はできるようになるだろう。都道府県の予算などで収集し、公共インフラである道路の規制情報は無償で提供してもいいのではないか。道路交通情報提供の体制を見直すべき時期が来ている。
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