さらに長官が事件に関する記者の質問に対し「いかなる事実もしゃべりたくない。サウジ側もそうだ」と述べ、ムハンマド皇太子を擁護する姿勢を示したことについても厳しい意見が相次いだ。長官はこうした批判に対し、サウジ側に捜査の時間を与えるため、と弁明しているが、事態はかえって悪化したとの見方が強い。
米国は10月16日、サウジ政府から1億ドル(約110億円)のシリア安定化支援金を受領した。トランプ大統領の「地元の治安維持の費用は地元が負担すべき」という主張にサウジ側が同意し、シリアの治安安定に取り組む米国を支援したものだ。
米国に事件を穏便に済ませてもらうための見返り
しかし、カショギ氏の事件がクローズアップされる中での支払いは「米国に事件を穏便に済ませてもらうための見返りではないか」などとの疑惑を呼ぶことになった。国務省高官は双方の関連を否定する声明を出した。
米議会では、与党共和党議員からも安易な事件の幕引きに反対し、サウジへの制裁を求める動きが出始めた。トランプ大統領が進める武器売却の停止を要求する声も高まっており、大統領としてもいいかげんな筋立てで事態を収拾させることが難しくなってきた。いったんは見え始めた政治決着の行方に濃い霧がかかってきた。
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