2022年10月6日(木)

中東を読み解く

2018年10月21日

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治安機関の将軍に責任押し付けか

 ベイルート筋が指摘するように、サウジの発表はずさん極まりない。事件を誰が指示し、作戦を誰が立案したのか、カショギ氏の本国への帰国話だけのために15人も必要だったのか、遺体はどこにあるのか、当初、ムハンマド皇太子も事件を全面否定していたのはなぜか、そして発表が事件から18日間もかかったのにはどんな理由があるのか。こうした数多くの疑問に答えず、幕引きを図るつもりなら、責任ある国家として恥ずかしい限りである。

 今回、事件の関連で解任された5人はサウド・カタハニ王室顧問や、治安機関副長官のアハメド・アシリ少将ら4人の将軍。解任の理由は「国王令による」とされているだけで、具体的には明らかではない。ニューヨーク・タイムズはサウジ高官の話として、アシリ将軍が事件の作戦を立案し、カタハニ顧問は作戦が実行されることを知っていた、と伝えている。

 アシリ将軍はムハンマド皇太子の推進するイエメンへの軍事介入に大きく関わり、戦況について会見するなど皇太子の信頼が厚かった人物。発表はアシリ将軍らに責任を押し付けるものになっており、将軍が今後、拘束されることもあり得るだろう。

 カタハニ王室顧問も皇太子の側近。皇太子を世界中に売り込むメディア戦略を担当し、ツイッターには130万人といわれるフォローワーがいる。国外でサウジ批判をする反体制派のブラック・リストを作成し、こうした人々を本国に戻す作戦を担っていた。カショギ氏にも政府の要職をオファーし、帰国を再三にわたって促していた。

 しかし、ムハンマド皇太子に権力が集中する中で、カショギ氏のような大物に対する作戦が将軍らの判断だけで実行されるとは到底考えられない。「少なくとも皇太子の了承が必要だ」(ベイルート筋)との見方は強い。サルマン国王が情報機関の建て直しの責任者に皇太子を任命したのも、何が何でも皇太子を守るという決意の表れだろう。

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