発見した卵を
なぜすり潰すのか
卵を見つけても、それが本当にウナギの卵なのかどうか判別しなければなりません。そのためには、卵をすり潰して、遺伝子解析を行う必要があります。
2009年の調査では、世界で初めてニホンウナギの卵を31粒発見しましたが、見ただけでそれがウナギと判断できる人は世界中に1人もいません。採集された全ての卵をすりつぶしたのはそのためです。
今回は、同時に140個以上が見つかったため、一部を遺伝子解析に供してウナギであることを確認した後、7粒をホルマリン漬けにして標本を作成することができました。
ホルマリン漬けにすると、形は固定されるのですが、その後の遺伝子解析ができなくなってしまうというデメリットがあります。ただ、後世の研究者や、一般市民にウナギの卵がどんな形をしているのか、広く伝えることはできます。
ちなみに、このホルマリン漬けの卵は、7月16日から10月16日まで東京大学総合研究博物館の特別展示である「鰻博覧会」で公開されているので、是非、足を運んで見てください。
今回、卵が大量に見つかったことで、産卵の地点と時をほぼ正確に特定できるようになりました。今後は、潜水艇などを用いて実際の産卵シーンを撮影することが大きな目的になります。
船の中を流れる
独特な時間
海洋調査船に限らず、船の中には独特な時間が流れています。最も特徴的なのが、4時間作業して8時間休むという作業を繰り返す当直体制があることです。
例えば、午前0時~4時・午後0時~4時までを「ゼロヨン」、午前4時~8時・午後4~8時を「ヨンパー」、午前8時~12時・午後8時~12時を「パーゼロ」と呼びます。
白鳳丸に乗り込んだ研究者・技術者は、4カ国7機関の計24名に上りますが、3つの班に分かれ、4時間調査して8時間休むというこのサイクルを繰り返します。ただ、船に乗る時間が限られており、なるべく多く研究に携わりたいと考える研究者が多いため、他の班を手伝う場面も多くみられました。
船の中ではありますが、各国のウナギ研究者が交流するために、酒盛りも催されます。貴重な休息時間の中ですので、1時間程度と短いのですが、息抜きの場になります。
船内ですので、どうしてもつまみは乾き物が中心になりますが、10日も経つとだんだん飽きてきます。今回は他大学の研究者が持ち込んだ豆腐の味噌漬けや、NPOの方が築地の卵焼きを持参してくれたおかげで、大変な盛り上がりをみせました。
(写真提供・東京大学大気海洋研究所)
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