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2018年11月16日

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島澤 諭 (しまさわ・まなぶ)

中部圏社会経済研究所研究部長

富山県生まれ。1994年東京大学経済学部卒業 同年4月経済企画庁入庁。調査局内国調査第一課、総合計画局計量班、調査局国際経済第一課等を経て2001年内閣府退官。02年秋田経済法科大学経済学部専任講師、04年10月秋田大学教育文化学部准教授。12年4月より現職。*記事はすべて筆者の個人的見解であって、筆者の所属組織とは無関係です。

将来の人手不足はどれほど?

 法務省は、14日、14業種別の外国人労働力の受け入れ規模(の上限)を国会に提示した。それによると、現時点での人手不足は58.6万人、5年後には145.5万人にまで拡大するとしている。その穴埋めとして、2019年度から5年間で26.3万~34.5万人の外国人労働力の受け入れを見込み、19年では3.3万~4.8万人を受け入れの方針としているようだ。この試算がどのような前提のもとで弾き出されたものであるかについての情報は全くないが、いずれにしても、一定の仮定を置いた上で、具体的な人手不足の数やそれを埋め合わせるのに必要な外国人労働力の数を求めているはずだ。

 本記事では、まず、(1)2017年の年齢別・性別就業率を求め、国立社会保障・人口問題研究所「将来推計人口(中位推計)」の年齢別・性別人口に掛け合わせることで、2065年までの就業者人口の推移を求めた。次に、(2)2000年から2016年までの平均経済成長率を潜在成長力とみなし、いわゆる成長会計の手法によって、資本ストック、労働力、生産性の貢献分に分解し、同期間の資本ストック及び生産性の貢献分を将来にわたっても一定と据え置いた上で潜在成長率を今後も維持するのに必要な労働力(就業者数)を求めた。そして、(3)(1)で求めた就業者数と(2)で求めた就業者数の差分を不足する労働力として機械的に算出した1

 その結果は、図1の通りである。2018年時点で6515万人の就業者は、少子化、高齢化とともに2065年には4121万人にまで減少する。一方、1%弱の潜在成長率を維持するのに必要な就業者数は2018年では6570万人強であるが、2065年には6726万人程度にまで増加する。その結果、人手不足は2018年には56万人であるものが次第に拡大し、2065年には2600万人強にまで深刻化する2。要するに、2065年には累計で2600万人強の外国人労働力を導入しなければ、1%弱の潜在成長率を維持することができないのだ。その結果、2065年の労働力の2.6人に1人強が外国人という計算になる。今回の外国人労働者の受け入れをきっかけとして、なし崩し的に日本の国のかたちが変わってしまうとの懸念が根強いのも納得できる。

 以上のような本試算に対して、法務省の試算は、試算の前提が異なるにもかかわらず、足元の人手不足数はほぼ同数となっているが、法務省が示した人手不足の見込み数は14業種に限定されていることもあるからか、5年後の人手不足見込み数は控えめな数字となっている。意地悪な見方をすれば、外国人労働力導入がいかに切迫しているかを示すために足元の数字は大きく見せ、しかし、外国人が増えすぎることに対する国民の懸念を軽減するために将来の見込みは小さく見せているとも受け取れる。やはり、法務省の試算はどのような前提条件を用いてなされたのか、建設的な議論をし、賛成派も反対派も納得できる結論を得られるようにするためにも公表する必要があるのではなかろうか。

 ところで、法務省の提示する足元で58.6万人、5年後では145.5万人という人手不足の水準は、日本の国の形を変えるトリガーを引いてしまうだろう外国人労働力受け入れに関して1カ月弱で是非を決しなければならないほど深刻と言えるのか、疑問を持たれても不思議ではない。

1:仮定の置き方によって、試算結果が異なるため、本記事の試算結果及びシミュレーション結果については、幅を持って解釈する必要がある。
2:もちろん、現実的には、人手不足が深刻化すれば、省力化投資や生産性の改善などが実施されるため、人手不足がこれほどまで悪化することはない点には留意が必要である。

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