無視か、制裁強化か
CIAが事件の大元締めがムハンマド皇太子であると結論付けた意味は大きい。問題は情報機関嫌いのトランプ大統領がどう対応するのかだ。無視するのか、それとも新たな事実が積み重なったとして、サウジに対する制裁を強化するかどうか。
トランプ政権はサウジ検察当局が容疑者11人を起訴し、5人に死刑を求刑する方針を公表した直後に、事件に関与したサウジ政府高官ら17人に制裁を科すと発表した。この両国のほぼ同時に近い発表は、協調して事件の幕引きを図りたいという思惑を浮き彫りにするものだった。
トランプ大統領はサウジとの12兆円に上る武器売却契約を制裁などで反故にしたくない上、中東戦略の優先課題である「イラン封じ込め戦略」にはサウジの協力が欠かせないことなどから、ムハンマド皇太子がこれ以上傷つかないことを望んでいる。
しかし、米議会では超党派のグループが武器売却の禁止やイエメンへの軍事介入をサウジに停止させるため、武器禁輸を含めた制裁措置を策定、トランプ政権に迫っている。与党共和党の議員でさえ「すでに逮捕されている人間を制裁しても意味がない。何か対応しているというふりをしているだけ」とトランプ政権を批判するまでになっている。