Washington Files

2018年11月19日

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斎藤 彰 (さいとう・あきら)

ジャーナリスト、元読売新聞アメリカ総局長

1966年早稲田大学卒業。68年米カリフォルニア州立大学バークレー校大学院修士課程修了、70年読売新聞入社。ワシントン常駐特派員を2度務めた後、アメリカ総局長、東京本社取締役調査研究本部長などを歴任。近著に『中国VSアメリカ』『アメリカはカムバックする!』(いずれもウェッジ)がある。

個人所得税申告問題

 ただ、トランプ氏にとって、これらとは別にもうひとつの深刻な懸念材料がある。それが、本人の個人所得税申告問題だ。

 歴代大統領はこれまで、大統領就任の際に国民向けに納税者としての範を示すため、自ら過去の確定申告内容を公表してきた。しかし、トランプ氏は大統領選挙期間そして当選後も、マスコミや市民団体からの度重なる公表要求にもかかわらず「国税当局が提出書類を精査中」を理由にこれを一貫してはねつけてきた。それから2年近く経過した今日も、依然としてその立場を崩していない。

 これに対し、大統領含め政治家や官僚の汚職、職権乱用などを取り締まる立場にある強力な権限を持つ下院監査委員会(House Oversight Committee)はこれまで、委員長ポスト含め共和党支配下にあったため、この問題を一切無視してきた。

 ところが、1月から委員長ポストを手に入れることになる民主党は、同問題に対する世論の突き上げもあり、委員会審議を通じ、脱税または不正申告の疑いも含め正面から真相究明に取り組まざるを得なくなる。

 この点について、次期委員長就任が予定される民主党のエリジャ・カミングズ議員は7日、ワシントンポスト紙とのインタビューで「トランプ大統領は自らの税申告問題、そして就任以来の連邦政府・トランプ・インターナショナル・ホテル(ワシントンDC)間のさまざまな商取引に関して納得のいく説明責任を果たしていない。われわれはまずこうした問題を本格的に調査する」と言明している。

 実際に同委員会の調査活動が開始された場合、まず国税当局に対し、これまで非公開だったトランプ氏の過去何年にもわたる確定申告関連書類の提出を要求することは確実であり、これに対し、提出に応じるかどうかはムニューシン財務長官の判断ひとつにかかっている。いずれにしても同長官は難しい判断を迫られることだけは確実だ。

 そしてもし、確定申告書類が公表され、その結果、不正申告の実態が暴露された場合は、犯罪行為に相当するため、大統領の弾劾そして罷免に至る最悪の事態を迎えることになる。

 とくに個人所得の確定申告については大多数の国民の琴線に触れる問題であるだけに、もし大統領の不正が明るみになった場合、共和党議員の間からも弾劾支持者が出る可能性も否定できない。

 中間選挙を終えたアメリカの政局は来年1月早々から、トランプ政権と民主党下院との微妙なせめぎ合いを中心に一層、緊迫した状況を迎えることになりそうだ。

  
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