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Washington Files

2018年11月26日

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斎藤 彰 (さいとう・あきら)

ジャーナリスト、元読売新聞アメリカ総局長

1966年早稲田大学卒業。68年米カリフォルニア州立大学バークレー校大学院修士課程修了、70年読売新聞入社。ワシントン常駐特派員を2度務めた後、アメリカ総局長、東京本社取締役調査研究本部長などを歴任。著書に『中国VSアメリカ』『アメリカはカムバックする!』(いずれもウェッジ)がある。

メキシコの壁への莫大な支出

 しかも、このように世界情勢が緊迫の度を深め、アメリカの確固たる軍事対応が求められる重要な時期に、国防予算を犠牲にしてまでも大統領が「アメリカ・ファースト」の象徴でもあるメキシコ国境沿いの「壁」建設計画のために莫大な支出を要求し続けているのも、皮肉といえば皮肉だ。

 同計画は言うまでもなく、中米諸国からの不法移民取り締まりを目的としたものであり、「国防戦略委員会」が警告する「国家安全保障上の危機」とはまったく無縁だ。それにもかかわらず、大統領は全長2000キロにおよぶアメリカ版“万里の長城”建設に固執し続け、そのための第1次段階費用として議会に対し50億ドルの支出を要請している。しかし、専門家の試算によると、完成のための必要総コストは200~300億ドルにも達するという。

 さらに「アメリカ・ファースト」の一環として今後莫大な予算計上が予定されているのが、国内道路、線路、河川、港湾、橋梁など老朽化したインフラ整備のための大規模投資だ。

 今年初めに明らかにされたホワイトハウス「インフラ整備10年計画」によると、総額1兆5000億ドルにおよぶ壮大なもので、その大半は州、市町村、民間に負担させる一方、連邦政府としては2000億ドルの出資を見込んでいる。ただ、財政難にあえぐ一部の市町村の中には、自己負担を渋るところもあり、結果的に連邦政府負担分が当初よりさらに膨らむ可能性も指摘されている。

 インフラ投資は長期的に見た場合、アメリカの経済成長維持のためにきわめて重要であることは確かだが、短期的には、大幅減税による減収と合わせ財政赤字をより一層、拡大させることになりかねない。
 
 次の大統領選挙を2年後に控え、「アメリカ・ファースト」戦略にこだわるあまり同盟諸国との関係悪化を招き、中国およびロシア相手の軍事的優位性確保が困難になる一方で、国内的な財政状況の悪化にどう対処していくのか―トランプ大統領が今後直面する課題はきわめて深刻と言わざるを得ないだろう。

  
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