2023年2月8日(水)

Washington Files

2018年11月26日

»著者プロフィール
著者
閉じる

斎藤 彰 (さいとう・あきら)

ジャーナリスト、元読売新聞アメリカ総局長

1966年早稲田大学卒業。68年米カリフォルニア州立大学バークレー校大学院修士課程修了、70年読売新聞入社。ワシントン常駐特派員を2度務めた後、アメリカ総局長、東京本社取締役調査研究本部長などを歴任。著書に『中国VSアメリカ』『アメリカはカムバックする!』(いずれもウェッジ)がある。

ペンタゴン関係者は不満を隠さない

 しかし、他の省庁並みの5%カットは免れたもののそれでも、ペンタゴン関係者は不満を隠さない。

 軍事専門紙「ディフェンス・ニュース」によると、国防総省高官は「今後のインフレ上昇分を差し引いた上で、人件費増、技術開発投資なども含め要件を満たすためには最低毎年2~3%の予算増は絶対必要だ……とくに2020年度には物価上昇率が目立つ時とぶつかるだけに、逆に予算のアップではなくダウンとなるのは困ったものだ」と厳しい表情で語っている。

 さらに大統領の国防費カット方針については、去る11月14日公表された「国防戦略委員会」報告書でも厳しい批判が展開された。同委員会は連邦議会によって民主、共和両党の元国防関係当局者14人から構成され、「2018年トランプ政権国家防衛戦略」についての評価を目的として審議を進めてきたもので、報告書では主に以下のような点が指摘されている。

  1. 世界の新たなる大国間競争の時代にあって、アメリカの軍事的優位はすでに危険なレベルにまで低下し、将来中国およびロシアとの戦争で敗北しかねない状況になりつつある
  2. 政府は強いアメリカというビジョンを実行に移すためのスピードと十分な投資を行っておらず、このままではアメリカの軍事的優位性が一層失われ、国家安全保障上の非常事態を惹起することになる
  3. この点、権威主義国家である中国およびロシア両国はアメリカと対等な軍事力増強に着手、当該地域における優位性の確保とグローバルな軍事力展開を模索している
  4. アメリカは過去何十年にもわたり間違いなく軍事的優位性を維持してきたものの、その後、現状をよしとし、冷戦を想起させる中国やロシアとの軍事力レースに勝ち残るために不可欠なあらゆる資源調達(予算獲得、技術開発など)、イノベーションといった 必要な努力を怠ってきた、
  5. 欧州、アジア、中東において同盟諸国の信頼を損ない地域紛争の危険性が高まるにつれてアメリカの軍事バランスは悪化してきた
  6. こうした状況下にあって、同委員会としては必要な軍事予算規模に言及する立場にはないものの、将来的な対中国およびロシア戦争での勝利を確実にするためには、従来の国防関連予算だけでは不十分であることは明白だ

 同報告書は超党派委員会の性格上、トランプ政権を名指しで批判はしていないものの、大統領自身が就任以来、「アメリカ・ファースト」を錦の御旗に掲げる一方、NATO(北大西洋条約機構)など西側同盟関係の重要性に疑問を投げかけ、メイ英国首相、マクロン仏大統領、メルケル独首相などへの個人批判発言などを通じ、対米関係がとくに動揺を来していることや、中国やロシアがその間隙をぬって軍事攻勢を強めつつあることへの危機感を随所ににじませたものとなっている。


新着記事

»もっと見る