経済的、戦略的観点から米台間でFTA(自由貿易協定)を締結すべしとする本論評は、米国として今日の台湾の抱える必要性に正面から答えようとするものである。台湾は科学技術面での優秀さに加え、戦略的に孤立しているので、トランプ政権にとっては、日本、韓国とのFTA だけではなく、台湾ともFTA を締結すべきである、と言っている。
11月に行われた統一地方選の結果、蔡英文政権は大敗を喫し、これから、1年数か月の間にいかに民進党の政権基盤を立て直すかという極めて困難な課題に直面することとなった。蔡英文は最近も日本側関係者に対し、TPP第2ラウンドへの参加を強く希望するとして、日本の支援を要望したが、台湾にとっては、米国および日本とのFTA もTPP への参加も、それほど大きな差はないのかもしれない。TPP については米国が抜けている現状では、日本に対し支援を要望する以外ない、ということになる。いずれにせよ、台湾経済にとっては、中国への依存度を減らすためにも、米、日との経済的結びつきを強化したいところである。
米国AIT(在台湾米国協会)の元代表を務めたS.ヤングとW.スタントン の二人が最近、台湾で開催されたシンポジウムの席上、米台間でFTA を締結することの意義を指摘したことが、“Taipei Times” で大きく報道されている(‘Taiwan-US FTA urged at forum’,Taipei Times, December 3, 2018)。
二人に共通する問題意識は、台湾が中国の「シャープ・パワー」に対抗するには、米台間でFTA を締結することである、とする点で一致している。ヤングは、「米台間には、古くから米国の豚肉、牛肉の一部輸入を禁止する措置がとられているが、この禁止措置を解除することがFTA 締結を容易ならしめる」と指摘し、他方、スタントンは、「台湾の西太平洋における位置とその戦略的重要性からみて、個々の貿易上の利益に拘泥すべきではなく、台湾とのFTA が必須である」との見方を示している。
日本にとっても、経済的、戦略的に見て、台湾との間のFTA 締結、TPP への台湾の参加協力などを如何に扱うかは、今後の主要課題となるであろう。特に、今回の統一地方選挙において福島県等5県からの産品輸入禁止措置の継続が国民投票によって決定した以上、この禁止措置をいかに扱うかは、新しい難問である。日本にとっては、台湾による米国の食品輸入規制の前例は良い参考となるものであり、日米間で緊密に協議する必要性が出てくるものと思われる。
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