遊び心の中に会津の伝統技法が生きる
大名道具の弁当箱である「提重(さげじゅう)」を現代風にアレンジした「bento for picnic(弁当フォー・ピクニック)」も、遊び心の中に、会津の伝統技法が生きている。最近では、ストリートアーティストとコラボをした限定品のマグカップや椀を作っている。新しい芸術が伝統的な会津塗りと共鳴することで、新たな魅力が生まれている。
セレクトショップ美工堂を運営している関美工堂は昭和21(1946)年の創業で、表彰の際の記念品として「楯」を商品化した会社として知られる。長年、トロフィーやカップなどを作ってきた。上質な会津塗りの手仕事の技法を優勝楯という形に変えて付加価値を付け、市場の多様化に活路を拓いた。祖父、父の跡を継いだ三代目の関さんは、漆器の原点に戻って生活の中で使われるモノ、時代に適したあり方を模索し、祖父と同様に会津塗りの多様化を目指している。
そんな関さんの「NODATE漆器」が女性誌やファッション誌で注目されている。シャネルの特集ページのすぐ後に、「NODATE」の特集が組まれたりするのだ。また、裏千家系の出版社である淡交社のオンラインショップでも、「NODATE one」が扱われた。本家本元に茶椀として認められた格好だ。生活の中で使われる実用性の高い本物に「美」を見いだすのが日本人本来の美意識なのかもしれない。そんな美意識を関さんの「NODATE」は大いに刺激したのだろう。
「会津は宝の山です」と関さん夫妻は息を弾ませる。関さんは町の中心にある美工堂を、世界のおしゃれな一級品を集めたセレクトショップにした。東京やニューヨークにあるようなお店だった。だが2年半ほど前に店作りの方針を一変させた。「NODATE」漆器を中心に、会津木綿で作った昔ながらの作業服など、会津の手作りの逸品を揃えるようにしたのだ。
「今は世界で唯一のお店になりました」。そう語る関さんは漆器文化に代表される「会津の価値」に磨きをかけ、国内外に売り込んでいくことが自らの役割だと考えている様子だった。
写真・湯澤 毅
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