働こうとしない人たち
昨年末、2018年12月29日付けのマレーシア英字メディア「スター・オンライン」がマハティール首相の取材記事を掲載した。氏はマレー人を優遇するブミプトラ政策に言及し、こう語った。
「マレー人を助けようと政府は施策などで行動を起こしている。しかし、マレー人自身が自己変革をもって価値体系を変えようとしない限り、すべてが無駄になる。政府はこれまで多くの政策を打ち出し、多くの援助を与え、マレー人に多くの機会とサポートを提供してきた。しかし残念ながら、マレー人は旧態依然たる現状に甘んじて変わろうとしなかった」
マハティール氏はさらに語気を強める。
「われわれは働かなければ、収入を得ることができない。われわれは努力しなければ、進歩することもできない。マレー人は怠けものだ。私がこう言ったら怒られるだろうが、しかしこれは紛れもない事実だ。われわれが働きたくなければ、ほかにいくらでも働きたい人がいる。最終的に外国人労働者がこの国を占領するだろう」
学者・研究者でもあるマハティール氏は最後にこう指摘する。「私はヒトの行動を研究してきた。成功または失敗、その原因を最終的に人間の文化や価値体系に見出すことができる。たとえば、チャイニーズは他者の助けをなくしても自らの力で成功できる」
華人(チャイニーズ)の経済的優位性を牽制し、土地の子であるマレー人の地位向上を図るために、マレーシア政府は1971年からブミプトラ政策と称されるマレー人優先・優遇政策を取り入れた。しかし、今日に至るまでの経緯を見るかぎり、マレー人はこの政策によって状況が著しく改善されたわけでもなく、政策目標は実現できなかったと言える。
本当のことを言えないから嘘をつく
それにしても、マハティール氏はよくもこんなことを直言できたものだ。日本の政治家がこのような発言をすればただちに「差別」と叩かれ、辞任に追い込まれるに違いない。
本当のことを言えないから、日本の政治家は嘘をつくのである。
経営コンサルタントの大前研一氏がこう指摘する。「正しさがすべての経営の世界と違って、政治の世界では、本当のことをいったら絶対選挙で当選しない、当選するには嘘をつかないといけないということ。今の日本では、政治家になるのは嘘つきになるということなんだよ」(「週刊ポスト」2011年4月29日号)