2024年11月22日(金)

海野素央の Democracy, Unity And Human Rights

2019年3月22日

トランプのマケイン攻撃の意図

 トランプ大統領は、昨年8月に亡くなった共和党の重鎮ジョン・マケイン上院議員を最近、激しく攻撃しています。なぜ今になってマケイン議員に非難を浴びせているのでしょうか。

 米公共ラジオは先週、ロシア疑惑の捜査が終了したと報じました。ロシア疑惑を捜査するロバート・モラー特別検察官のチームの中で、主要な役割を果たしてきたアンドリュー・ワイズマン検事がチームを去り、ニューヨーク大学で教鞭をとることを理由に挙げています。同ラジオによれば、2週間以内にモラー氏が最終報告書を米司法省に提出するというのです。

 米下院にも動きがありました。モラー報告書の公表を求める決議案を「420対0」で可決しました。米司法省が報告書を改ざんしないように圧力をかけたのでしょう。

 トランプ大統領は3月17日、「米海軍で成績がビリのマケインが(大統領選挙の)投票日の前に公表されることを願って、偽りの文書を米連邦捜査局(FBI)とメディアに渡した」と、自身のツイッターに投稿しました。トランプ大統領はクリントン陣営の資金によって作成された「裏づけのない文書」に基づいて、ロシア疑惑の捜査が開始したと主張しています。

 さらにトランプ大統領は同月19日、米中西部オハイオ州ライマにある戦車の製造工場を訪問した際、演説の中でマケイン上院議員を改めて批判しました。同大統領は「率直に言おう。私は彼(マケイン議員)のことを好きになったことはない」と述べたうえで、「彼は私を危険にさらすために、偽りの文書をFBIに渡した」と強い口調で非難しました。

 「死人に口無し」といいますが、マケイン上院議員から真実を聞き出すことはできません。だからこそ、マケイン議員を標的にして攻撃しているのでしょう。

 トランプ大統領はモラー報告書の内容が自分に不利になった場合を想定し、対策を講じています。一連のマケイン批判の背景には、同上院議員と議会民主党が「共謀」して、自分を貶める行為をしたと米国民に印象づける意図があります。

 加えて、ロシア疑惑の捜査結果はまったく信頼性がないというメッセージを発信することで、最終的に自分に有利な方向へ世論形成を図りたいという思惑もあります。

 しかし、ロシア疑惑の捜査開始のきっかけは、トランプ陣営の元外交顧問で偽証罪に問われたジョージ・パパドポロス被告がオーストリアの外交官に、ロシアがヒラリー・クリントン元国務長官に打撃を与える情報を保有していると語り、同外交官がその内容を米国政府に伝えたことでした。米メディアは、トランプ大統領の主張は誤りだと指摘しています。

 いずれにしても、20年米大統領選挙に向けて、トランプ大統領はますます支持者を意識した言動や判断をする傾向が強くなるでしょう。

  
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