また、ワシントン・ポスト紙報道によると、今回軍用機派遣とは別にその前日の22日には、ロシア国営石油会社「Rosneft」がチャーターしていたシンナーを満載した大型タンカーが同国湾岸に接岸、原油輸出のための援助に乗り出したほか、ベネズエラ国営石油会社「PDVSA」がモスクワに海外支部を開設する動きを見せるなど、両国間の経済面での関係強化が目立っている。
こうした露骨なロシアの干渉を受けて、ポンペオ米国務長官は25日、ただちにラブロフ露外相に電話を入れ「ロシアは非建設的行動をやめるべきだ」と抗議するとともに、国務省報道官によると、同長官は「アメリカおよび周辺諸国はロシアがベネズエラ情勢を悪化させようとしていることに対し座視しない」と強い姿勢でクギを刺したという。
浮き彫りになった米露対立
ベネズエラ情勢の悪化を憂慮する国連でも、2月29日、安保緊急安保理が招集されたが、ここでも米露の対立が浮き彫りになった。
まず、米側はベネズエラ大統領選挙のやり直しとグアイド暫定大統領の国際的認知を求める決議案を提出したが、ロシアに加えて中国も反対したため、不成立に終わった。
一方のロシア代表はこのあと、メキシコ、ウルグアイ両国が提案していた「ベネズエラ与野党による対話開始」を軸にした決議案を提出して対抗したが、米英仏などの常任理事国の反対にあい、却下された。
このため当面、国連を舞台にした事態収拾のめどはまったく立っていない。
トランプ政権は当初、グアイド氏率いる反政府勢力の国民的支持とうねりに加え、アメリカはじめ西側主要国の同氏に対する後押しによって、マドゥロ政権がいずれ自壊し、民主政府の樹立が達成できるものと読んでいた。事実、ワシントン・ポスト紙報道によると、「ホワイトハウス高官たち」も最近まで、ベネズエラ国内経済状況の悪化などによって社会不安が頂点に達し、「マドゥロ大統領が退陣に追い込まれるのも時間の問題」との楽観的見通しを抱いていたという。
ところがここにきて、ロシアが急に軍事、経済両面で同政権維持の姿勢を明確にしたことや、中国もアメリカと袂を分かちロシア側につき始めたことなどもあり、国内ムードも、“無血クーデター”を引き起こすほどの一時の盛り上がりにやや陰りが見えつつある。