2024年7月16日(火)

“熱視線”ラグビーW杯2019の楽しみ方

2019年4月10日

 「その先に戦術があるのですが、見える視野がそれぞれ異なりますから、右サイドと左サイドで戦術が変わってくることも考えられますが、現段階では初めてプレーする人がいますので、そこまでいくには時間が掛かるでしょう。まずは視覚に障害のある人たちに幅広く参加してもらえるようになることが先決です」

 橋本の言葉にあるように視覚障害者にとってパスされたボールをキャッチするのは至難のわざだ。そこで選手たちは仲間の身体に当てるようにボールを投げている。目の前にくればとっさにキャッチできる選手もいれば、身体に当たったボールをキャッチする選手もいる。だが、少しでも身体から逸れるようなパスには対応ができない。それだけに正確なパススキルとコミュニケーション能力が要求される。

 「お互いが理解し合うには時間が掛かりますが仲間とコミュニケーションを図って、それぞれが理解者となり協力し合うことによって、7人制ラグビーと同じようにみんなで走って、パスを繋いでトライを取る楽しさを味わえると思っています」

 「目は不自由でも走りたいと思っている人は大勢いるはずです。ラグビーは走ることに制約はありません。パスだって練習すれば誰にでもできるものです。身体を思いっきり動かしたい人や走りたい人はぜひ参加してください」

 「和を以て貴しとなすという日本人らしく、私たちは『和』を大切にするチーム作りをしていきたいと思っています」

 橋本は目黒高校、東洋大でプレーし、大学や社会人のチームで監督を務めた経験があるが、後年視覚に障害を負い、光を失った。しかし、「我々には目で見る明るさはないが、心で感じる明るさをみんなが持っている」と力強く語っている。

日本代表になれるチャンス

 今回コーチに就任した浅間光一は、元ブラインドサッカー(GK)の日本代表で現在も新潟県ブラインドサッカー協会の事務局長を務める視覚障害者スポーツの理解者である。

 「フェイスブックでブラインドラグビーのことを知り、どんな競技なのかという興味本位で交流のあったブラインドサッカーの選手たちに声を掛けたところ数名が集まってくれました」

 「その後、橋本会長から『指導担当をお願いしたい』という相談を受け、ラグビーの経験者でもない僕がコーチを引き受けることになったのですが、それは視覚障害を理解している僕がいる方が選手たちも続けやすいんじゃないかと思ったからです」

浅間光一コーチ

 浅間はブラインドサッカー日本代表の経験を踏まえこう語っている。

 「日本代表のゴールキーパーとして出場した経験があるのですが、初めて君が代を歌ったときは鳥肌が立って、気持ちが悪くなるほど緊張しました。でも、なんともいえない高揚感がありました」

 「視力が弱くてスポーツの国際大会に縁のなかったような人たちに、新たなチャンスができたことを嬉しく思っています。試合に臨んでみんなで君が代を歌える機会はなかなかありません。そうした素晴らしい経験をしてほしいと願っています」


新着記事

»もっと見る