理詰めの交渉で円満解決
S氏が技術系の真面目な勤め人であることから、敷金精算問題は数字とロジックを整理して丁寧に説明して理解を得てゆく必要があると考えた。
ビジネスレターを作成する要領で、契約更新料30万円と家賃一ヵ月分10万円が未払いとなっていることを説明。次に原状回復費用項目が①~④あることを説明。最安値の見積もり合計が9万円弱であることを通知して了承を求めた。以上をメールで送付。
数日後S氏よりの回答を受信:家賃10万円の未払いは認める。契約更新料は不動産屋及び大家から催告がなかったので貸主側にも手続き上の瑕疵があるので、30万円全額請求は過大。原状回復費用9万円は相場価格から判断して妥当と認める。
熟慮の末、以下趣旨でS氏へ返信:契約更新料については判例上催告の有無に関わらず債権債務は存在する。しかしS氏が長年誠実な借主であったことを多として請求額を減額することを検討したい。
数日後S氏に電話して契約更新料を20万円に減額して未払い家賃10万円と敷金30万円を相殺することで合意。そして原状回復費用9万円だけを清算することを確認。
こうして敷金精算問題は一見落着。インドから帰国して2カ月が経過していた。しかし、これは老朽アパート大家業に降りかかるトラブルの序章に過ぎなかった。
⇒第2回に続く
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