未払いの契約更新料で敷金は相殺できる!
翌日老人ホームに老母を尋ねて賃貸借契約書の所在を聞いたが「そんなものは見たことがないよ。不動産屋さんの言うとおりにすればいいんだよ」と予想通りのトンチンカンな反応。
その足で留守宅となっている実家に行き、半日家探しのすえ押入れから古文書のような賃貸借契約書の束を発見。S氏の賃貸借契約は最後の契約書が8年前に締結されている。その後は不動産屋が更新手続きを怠ったらしく契約書がない。
賃貸借契約は2年契約であり2年毎に契約更新する規定となっている。契約更新時に家賃1ヵ月分を契約更新料として大家に支払うと原契約に明記されている。
家賃は1カ月10万円であるから、三回分の契約更新料は累計30万円となる。預かっている敷金と同額だ。民法上では債権債務の時効も成立していないこともネットで確認した。
頼りになる金融機関の口座記録
数日後。家賃、契約更新料の振込先である老母名義の口座のある銀行の支店長氏に長々と事情説明して半ば強引に過去18年分の入出金記録の分厚いコピーを出してもらった。
案の定、契約更新料に関しては過去三回分の入金記録がなかった。さらに家賃の入金記録を眺めていたら振込日が遅れているケースが散見された。念のために数えてみると15年間の入居期間中の家賃入金総額が10万円不足していた。
家賃と契約更新料の合計40万円が未払いとなっており敷金30万円と相殺しても更に10万円大家に請求権があることが判明。
契約書に記載されていたS氏の携帯電話に電話したところ、転勤のため早々に引っ越すとのこと。勤務先は大手企業でありS氏は技術者であった。電話での応対も的確であり信用できる交渉相手と直感した。
未払い金には触れずに、「原状回復費用が確定したら敷金から差し引いて清算しますのでメルアドを教えてください」と丁重に依頼した。
アパート管理は手間暇かければコスト削減できる
S氏は梅雨明け前にコーポ○○から退去した。さっそく居室を現況確認。契約上の規定と照らし合わせて、S氏に負担してもらう原状回復費用は以下の通りとした:
- 室内クリーニング費用
- 畳の表替え費用
- 鍵の交換
- ひびの入った窓ガラスの交換
現況確認後に商店街に出て畳屋、鍵屋、ガラス屋を探したが、現代日本を象徴するように半分シャッター商店街と化していた。隣町まで走り回って畳屋、鍵屋、ガラス屋から数軒づつ見積もりを取りベストと判断した業者に発注。
室内クリーニングはネットで数社から見積もりを取って、さらに面接したところ隣町の業者が価格・サービス・人柄ともにベストであった。この業界では見積もりの値幅が滅茶苦茶大きく不動産管理会社に任せれば20万円は下らないようだ。ちなみに選定した業者は5万円でピカピカにしてくれた。
自分で直接業者に発注した結果、原状回復費用は上記①~④合計が9万円以内で収まった。不動産管理会社に任せればおそらく35万円以上になったであろう。