2024年11月21日(木)

【中学受験】成功を導く父親の役割

2019年4月18日

「イクメン」「働き方改革」……
中学受験におけるお父さんの関わりに変化あり

 中学受験といえば、ひと昔前までは、お母さんと子どもの二人三脚が主流でした。ところが、10年ほど前から「イクメン」という言葉が世の中に広がると、子育てに積極的に参加したいと思うお父さんが増えてきました。また、今は「働き方改革」が進められ、残業ができなくなってしまったお父さんは、家に早く帰れるようになり、「父親として家族のために何かしなければ」という使命感を持つようになりました。その結果、増えたのが「中学受験に熱心なお父さん」です。

 お父さんが子どもの受験に関心を持ち、積極的に関わるのは、とても良いことだと思います。なぜなら、中学受験は子どもだけで進めていくことは難しく、親のサポートが不可欠だからです。従来はそれをお母さん一人が背負っている家庭がほとんどでしたが、このような時代の流れとともに、お父さんも加わるようになってきています。それがうまくいけば、理想の中学受験といえるでしょう。ところが、中にはお父さんが介入することによって、うまくいかなくなってしまうケースもあるのです。

 中学受験指導を40年以上一筋に行い、中学受験専門のプロ家庭教師集団「名門指導会」を設立して15年、これまでにたくさんの受験家庭を見てきました。家庭教師の仕事は勉強を教えることですが、こと「中学受験」に関していえば、家庭内の空気を良くすることも大きな役割だと感じています。というのは、精神的にまだ幼い小学生の子どもを勉強に向かわせるには、“心の安定”が必要だからです。それには家庭内の空気を快適にすることが大切だと考えています。そこで、本連載では、「中学受験におけるお父さんの役割」について考えてきたいと思います。

「お父さんが子どもの頃はこんな簡単な問題は解けたぞ」

 厄介なお父さんは他にもいます。自分の過去の成功体験を自慢するお父さんです。

 中学受験における親の役割はいろいろありますが、子どもの健康面や精神面のサポート、日々の学習スケジュールの管理は、やはりいつもそばにいるお母さんの方が適していると思います。すると「お父さんの役割は何?」ということになるのですが、それ以外の役割といえば、「やはり勉強を教えてあげることだろう」と思い込み、子どもの勉強に介入してくるお父さんがいます。親が子どもに勉強を教えることが必ずしも悪いこととは思いません。しかし、教え方や接し方には十分配慮が必要です。

 カイトくんのお父さんは、中学受験経験者で麻布→東大卒のエリートサラリーマン。わが子を母校の麻布に入れたいと、カイトくんの受験に積極的です。ところが、当のカイトくんの成績はとても良いとは言えません。しかも、近頃はお父さんの存在が鬱陶しく感じています。というのも、カイトくんのお父さんは事あるごとに「なんでこんな問題が解けないのだ!」「お父さんが子どもの頃は、こんな問題簡単に解けたぞ」と、自分の子どもの頃とカイトくんを比べるのです。

 また、私達が授業を行う時は、プロの指導を家庭でも活用してもらうために、親御さんにも同席していただいているのですが、そういうお父さんは子どもが問題を解いている途中で、「おっ、お父さんはもう分かったぞ!」と、子どもを差し置いて答えようとします。一体誰のための授業なのか・・・・・・。

 一方、こちらの指導をまったく無視して、独自のやり方で勉強を教えてしまうお父さんもいます。最も多いのが、算数を数学で教えてしまうお父さんです。数学を知っている大人からすれば、中学受験の算数はまどろっこしく感じるのでしょう。「どうしてこんな非効率的な解き方をしているのだ!」と方程式を教えてしまい、子どもを混乱させてしまうのです。算数と数学では考える手法がまったく違います。大人は効率を求めますが、受験算数が求めているのはそこではありません。学校は算数という教科を通じて、子ども達に試行錯誤する力を求めているのです。

 こうしたことを知らずに、自分のやり方で押し進めようとするお父さん。なぜ、お父さんは暴走してしまうのでしょうか?

 それは、“できる自分を自慢したい”のだと思います。しかし、中学受験は、お父さんの自慢をアピールする場ではありません。主役はあくまでも子どもです。そこを無視して、お子さんの足を引っ張るようでは、「百害あって一利なし」です。


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