ふたりの関係が来年も続いていることを、
互いに確かめ合った瞬間
大晦日、シロは職場の忘年会を早めに抜けて、マンションに帰り、インスタントの味噌ラーメンを作り始める。毎回のタイトルになっている料理を作っていくシーンも、ドラマの楽しみのひとつである。今回はケンジの料理である。「袋ラーメンは、自分で作って食べたい」と、下ごしらえに入る。
豚肉などの材料を冷蔵庫から出して、「シロさんからおそわった」という半熟卵の準備は、「器に水をちょっと入れて、卵を割って、レンジで40秒」「そうそう、黄身を突いて」と。バターを入れるのに「禁断のバター投入」と、シロから日ごろあまり食べさせてもらえない、うれしさがにじむ。
調理中も出来上がったばかりの味噌ラーメンを食べているときも、シロからの着信のスマホのバイブも無視。テレビの少年グループが歌って踊るシーンをみながら「こういう若い子とはもう付き合いたいとは思わないわ。親戚の子どもを見守るおばさんの気持ち。かわいい子を見るのはいいわ」と。
ケンジがようやくシロにかけ直すと。
シロ 何度もかけたのに、どうしてでないんだよ。大晦日をひとりで寂しいと思ってかけたのに。
ケンジ 味噌ラーメンを作って、食べてたの。
シロ あれは、作ったら即食べたいよな。
元旦を実家で過ごした、シロが切り餅をたくさん持って帰る。朝、昼、晩と餅が続いて、ケンジは悲鳴を上げる。パンが食べたいというのである。「にくいあの女のパン屋のパンでもいい!」
にくい女とは、シロがゲイでありながら、女性とつきあって結婚し子どもを作る可能性を試したが、結局別れた告白が下敷きになっている。その彼女が近所にパン屋を開店したのだった。
久しぶりのパンの上にのっていたのは、シロが実家から持ってきた栗きんとんである。
ケンジ おいしい。来年も食べたい!
シロ (母親に)いっておくよ。
ふたりの関係が来年も続いていることを、互いに確かめ合った瞬間である。西島秀俊と内野聖陽が、軽く微笑み合いながらかわすセリフがしゃれている。
テレビ東京系列のほか、スタートの日はまちまちだが地方局でも放映される。娯楽と情報番組から、ドラマの分野に急速に力をつけてきた「テレ東」の制作能力の高さを示している。かつては「テレビ番外地」といわれたが、いまでは東京キー局も「振り返ればテレ東」と視聴率競争においても認める存在を再認識させられる。
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