2024年4月26日(金)

中東を読み解く

2019年5月16日

イラク戦争とは全く勝手が違う

 しかし、イランとの戦争は米国が行ってきたイラク戦争やアフガニスタン戦争とはまるで勝手の違う戦いになるだろう。イランの国力がイラクなどとは比べてはるかに大きいからだ。

 人口はイラクが約2500万人だったのに対し、イランは8000万人を超える。中東でも指折りの大国だ。兵力も正規軍、革命防衛隊合わせ、約52万人。バシジと呼ばれる人民動員軍は100万人の動員力を誇っている。国土もイラクの4倍以上あり、民族的にもアラブ人とは違う誇り高いペルシャ人だ。

 1979年のシーア派イスラム革命を指摘するまでもなく、宗教心は強い。今でこそ自爆テロは過激派組織「イスラム国」(IS)などスンニ派の代名詞になっているが、元々はシーア派の専売特許だった。イラン・イラク戦争当時、イラク軍が敷いた地雷原をイランの若者軍団がオートバイで「アラー・アクバル」(神は偉大なり)と叫んで突破していったのは記憶に新しい。

 決定的なのはイランが弾道ミサイルを保有しているという点だろう。イランの中距離弾道ミサイルの射程は2000キロとされ、宿敵イスラエルに届く距離だ。イランと米国との戦端が開かれた場合、イランはかつてのイラクの独裁者サダム・フセインが湾岸戦争で行ったように、イスラエルやサウジアラビアなどにもミサイル攻撃を仕掛ける可能性がある。中東全域に戦線と混乱を拡大し、懸念した国際社会が米国に圧力を加えることを狙ってのことだ。

 何よりもイランがペルシャ湾の出入り口であるホルムズ海峡を封鎖すれば、世界の原油供給量のざっと3割が止まる。同海峡は狭いところで30キロ余りしかない。イラン革命防衛隊のスピードボートが機雷をまくだけで石油タンカーが海峡を通過できなくなってしまう。日本を含め世界経済には大打撃だ。


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