2024年12月23日(月)

<短期連載>ペット業界の舞台裏

2011年12月20日

 課題の多いペット業界。私はペットに関する様々な仕事に携わり、業界ならではの「常識」や「慣習」をみっちり経験してきました。この連載では、そういった経験をもとに私なりに業界の問題点や解決策について考えていきたいと思います。今回は、第1回の最後で触れた生体市場(ペットオークション)に関して、私が見てきた実態、よくある様子をお話しします。

 市場は会員制で、動物取扱業者の登録がないと利用できません。逆に動物取扱業者であれば、施設状況や管理状況など特に規制はなく利用できます。入会金・年会費と落札価格に比例して設定された手数料が主な収入となっています。平均で週に1回の開催で、多い所では1日に約1000頭の犬猫がセリにかけられています。

 近代化された市場では、大きな画面にセリ場に連れてこられた子犬・子猫が映し出されます。落札したい人は手元のリモコンスイッチを押して意思表示をし、最高値を提示した人が落札出来ます。もう少し古い設備の市場では、買い手が並ぶ会場へ段ボールに入れられた商品(子犬・子猫)がコンベアで流れてきます。値付けをする担当が1頭ずつつかみ上げ、歯並びや足の関節・へその状態などを確認し初値をつけます。セリ人の掛け声で金額が上がり始めると買い手は自分の会員番号が書かれたしゃもじで意思表示をし、最高値で落札者が決まります。市が終わると決済です。売る側は支払いを済ませ商品を受け取る、買う側は代金を受け取る(払い込みさせる)、そしてそれぞれが帰途に就く。そんな施設です。まるで大根やキャベツでも扱っているかのように、淡々とセリは進行していきます。

病気が蔓延するリスク

 セリを行うために繁殖者は各地から集まります。生後45日位までは親の免疫抗体がしっかり残っているため、伝染病にはかかりにくいという業界の常識があります。そのため業者は、まだしっかりと離乳も終えていない(平均生後35日ごろ)日柄の子犬・子猫を連れて、それこそ全国からやって来ます。施設状況や管理の方法、親の状態もいちいち確認することは出来ません。

 出陳業者は受付をし、場内へ商品を運び込み開場を待ちます。商品の子犬・子猫たちも産まれて初めて親兄弟から引き離され、空調もままならない場所でせまい箱に閉じ込められその時を待つのです。箱が開くと見知らぬ人間につかみ上げられ、口を開けられたり足を引っ張られたり、暫くの喧騒が終わるとまた箱に閉じ込められ再び待たされます。次に箱のふたが開くときは全く知らない場所、知らない人間の元へ着いた時です。

 小売店では、市から仕入れた商品は1週間ほど隔離して管理をします。伝染病や寄生虫の可能性があるためです。日本中から集まる犬や猫達は決して良い環境ばかりで育てられているわけではありません。特に繁殖屋は高く売れそうな個体は自分の所で販売をし、そうでないものを市場で捌くのが通例です。前述の通り、親の健康管理も行わず産ませた子犬・子猫は、体力や免疫力も弱いうえに長旅もあって発症しやすいのです。もし市に伝染病や寄生虫などの病原菌を持った個体がいた場合、参加していた全ての個体が感染し、多くの小売店に蔓延してしまう可能性もあります。


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