2024年4月20日(土)

オトナの教養 週末の一冊

2019年6月8日

アジア版「おしん」から日本版スティーブ・ジョブズへ

 日本が外国人材の門戸を広げても、産業構造をガラッと変える高度人材がすぐに日本へ来る訳ではない。「優秀な人材はアメリカのシリコンバレーや中国へ行く。日本の企業で働いたとしても、すぐに離れて、世界へ職場を求めたり起業したりしてしまう」と永井氏は語る。

 今回の入管法では、「特定技能」が同じ分野ならば転職することが可能となった。転職できることによって、長時間労働や低賃金といった劣悪な労働環境から新たな職場を選べるようになる。外国人労働者はより良い待遇や特定技能2号の資格を得ようと、必死に努力を重ねる。「アジアの貧しい家庭の人が人生の成功を得ようとやってくる。いわばNHKの朝ドラマ『おしん』のアジア版。ドラマのおしんは、新しく会社を創業した。今後、外国人が長く日本で勤める中で、会社を興し、日本人を雇うようなことになるかもしれない」と永井氏は期待する。

 また、現在、世界経済をけん引するGAFA(グーグル、アマゾン、フェイスブック、アップル)の創業者がみな移民系だったことにふれ「勤勉に働く外国人材が蓄財し、子どもに高い教育を施せば、子どもが大人になった時に日本の技術力アップに貢献してくれるかもしれない。日本のスティーブ・ジョブズになるかもしれない」と可能性を語る。日本が持つ高い技術力のベースに外国人材の二世や三世という異才が加わりイノベーションを起こすことも考えられるという。著書では、外国人社員を本格的に採用するようになった外食企業がラーメン店の店長を中国人、副店長をインドネシア人、主任をネパール人とし、オリジナルメニューの開発や独自の店舗改装といった新たなサービス提供を実現した事例も紹介されている。

 「理想を言えば、日本のモノ作り再興を及ぼしてくれること。そして、何十年か経ち、『転換点だったのは、令和の時代となり、外国人材の取入れを拡大した2019年だったね』と、おちれば最高ですね」と話す。

  
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