前向きに読み解く経済の裏側

2019年6月17日

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塚崎公義 (つかさき きみよし)

経済評論家

1981年 東京大学法学部卒、日本興業銀行(現みずほ銀行)入行。主に経済調査関連の業務に従事。2005年 銀行を退職して久留米大学へ。現職は久留米大学商学部教授であるが、当サイトへの寄稿は一個人として行うものであるため、肩書きは「経済評論家」とする。

政府が反対売買に応じ、ようやく取引が成立した

 ドル円も国債も、取引が事実上成立していなかったので、政府が取引に応じることになった。とはいえ、大量の注文に立ち向かうわけなので、元のレートでというわけには行かなかった。

 ドルは、300円程度での取引となった。国債は、額面の30%(額面100円の国債が30円程度)での取引となった。

 とにかく、大量の取引が一気に成立したところで、激動の1日が幕を閉じた。すべての市場参加者が疲弊し、ほとんどの投資家がため息をついていた。元気だったのは空売りをしている投機家くらいのものであった。

 しかし、市場参加者が本当にため息をつくことになるのは、その後のことだったのである。

政府が突然の勝利宣言

 夜になり、驚くべきことが起こった。政府が突然、勝利宣言をしたのである。「嵐は過ぎました。夜が明けたら、残骸の整理に着手します」と言うのである。時間が経つにつれて、ことの真相が明らかになってきた。

 政府が持っていた外貨準備は1.3兆ドル。そのうち1兆ドルを1ドル300円で売却し、政府は今夕、300兆円の現金を得たのだ。

 市場から吸い上げられた300兆円を供給するため、日銀は大量の国債を購入した。額面1000兆円の国債を、額面の30%である300兆円で購入したのである。

 なんと、いまや発行済国債をすべて日銀が保有しているのだ。日本政府は事実上の無借金となったのだ。格付けは、当然に引き上げられるであろう。

 投資家たちは、狼狽して投げ売りしてしまったことを後悔した。しかし、本当に青ざめたのは、空売りをしている投機家であった。買い戻そうにも、すべての国債は日銀が持っているのである。

 日銀が「額面の5倍で売ってあげる」と言い始めたら、それで買うしかない。「まさか中央銀行がそんな殺生なことをするはずがない」という根拠のない期待だけを頼りに、彼らは夜明けを待つことになったのである。

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